研究課題/領域番号 |
19K00487
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
伊藤 亮平 松山大学, 法学部, 講師 (80781070)
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研究分担者 |
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 教授 (60400206)
高名 康文 成城大学, 文芸学部, 教授 (80320266)
陶久 明日香 成城大学, 文芸学部, 准教授 (80515817)
山崎 明日香 日本大学, 商学部, 准教授 (10707350)
渡邊 徳明 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20547682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中世ドイツ文学 / 中世フランス文学 / ニーベルンゲンの歌 / ヴォルムスの薔薇園 / ミンネザング / ヴィッテンヴィーラー / コメニウス / ハイデッガー |
研究実績の概要 |
2020年度は、2019年度に日本独文学会(於成城大学)にて開催したシンポジウムでの発表成果を纏め、叢書として刊行した(『中世的身体イメージと遊戯性ー宮廷文化に内在する逸脱の傾向 』日本独文学会研究叢書 143(嶋崎啓編) 日本独文学会)。 また2020年度は主に、1.宮廷叙情詩ミンネザングにおける身体美と内面的徳の乖離、2.ナイトハルト劇に見られる『指輪』の身体描写の影響、3.『狐物語』と『フォベール 物語」を中心としたフランス中世文芸作品に見られる逆説的身体描写のドイツ中世文学への影響、4.中世叙事詩における遊戯的身体イメージについての近現代の再評価、5.ルネッサンスからバロック期の文芸作品における身体表象と中世の身体観および世俗宗教の受容、6.ハイデッガーの情状性の議論にみられる 中世哲学からの影響、以上のテーマに沿って研究を進めた。コロナウィルスの影響により、ドイツ語圏での調査の中止、学会活動の制限など、研究活動に大きな支障が生じ、研究分担者それぞれの研究成果を取りまとめて発表するまでには至らなかった。そのため、本年度は主に研究メンバーが各自研究室にて資料整理・文献調査を行い、必要に応じてメールなどを利用して進捗報告を行った。研究メンバー間の議論の中で、中世における逆説的身体観を考察するにあたり「老いと若返り」に注目する案が出された。そこで本年度は、上記1-6のテーマについての文献調査に加え、「老いと若返り」に関連した身体描写について予備的調査を行なった。なお予備的調査では、「老い」というモティーフが、抒情詩においては「高きミンネ」概念という恋愛観の発生した1170年ごろから登場し、本来「恋愛」と両立し得ない「老い」が、「恋愛」に相応しい「誠実さ」を表現するためのトポスとして用いられるようになったことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度はコロナウィルスの流行により、海外渡航を断念したため、現地調査を行うことができず、国内での文献収集・調査が中心となった。また学会活動が制限されるなど、様々な困難を抱えているため研究は遅れている。しかしZoomなどのオンラインツールに関する研究環境の設備が整い、研究メンバーのオンライン上での継続的な討論が可能である。2021度は研究代表者を中心に研究内容を取りまとめ、共同発表に向けてこれまでの遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
中世からルネッサンスまでの西欧の文学作品における身体の内外の不明瞭な相関について、特に「老年と若返り」に着目し、哲学的・美学的・倫理学的観点を超えて精神分析的また美学的観点から位置づけることを試みる。さらに、20世紀以降の表現主義的な芸術思考の変化において、遠近法の破壊とデフォルメされ記号化された構図に見出せる、ドイツ語圏の思想との相関を明らかにする。このことは、中世回帰的な文学的傾向を踏まえ、中世文学受容における身体描写の逆説のさらなる解明を意図している。これに際して、ハイデッガーをベースに現代ドイツ語圏の作家や芸術家の作品を考察する。更に20世紀以降の文学における身体描写の逆説的な性質についてハイデッガーをはじめとするドイツ哲学者の思考様式との類似性を検証する。これらの成果を全員で検討し、日本独文学会、国際アーサー王学会等で発表する。また研究チーム全体の成果を取り纏め、日本学術振興会への報告書の作成等を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響により文献調査のための海外渡航を断念せざるを得ず、本年度は国内での文献調査を行った。また2020年度に研究代表者が発注した消耗図書の一部の納期が次年度に繰越となった。次年度の使用額は主に、繰越となった消耗図書を含めた文献の購入、海外への渡航費用として使用する予定である。
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