研究課題/領域番号 |
19K00489
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今井 勉 東北大学, 文学研究科, 教授 (40292180)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フランス文学 / 文学と美術 / ヴァレリー / ルアール家 / 文化史 / 第三共和政 |
研究実績の概要 |
2022年度は本来の計画では研究の最終年度であったが、世界的な新型コロナウィルス感染症拡大の影響が未だ残存していた関係で、研究の中心となるフランス国立図書館西洋手稿部等におけるヴァレリー芸術論関連資料の現地調査を予定通り実行することがかなわず、日本国内での資料収集および情報収集、関連するテーマについての論稿の執筆や口頭発表に集中せざるをえなかった点は残念であった。 本研究に直接関係する実績としては、2022年11月12日に東京大学本郷キャンパスにおいて開催された日本ヴァレリー研究会での口頭発表と2023年3月15日刊行の東北大学フランス語フランス文学会編『フランス文学研究』第43号における書評論文、この二件を挙げることができる。前者は、東京大学教授塚本昌則氏によるヴァレリー『ドガ ダンス デッサン』の翻訳(岩波文庫カラー版、2021年11月刊)の合評会において評者を務めたものであり、典拠となった1936年初版の制作と復刻の背景などを最新の資料群をもとに解説したものである。また後者は保苅瑞穂『ポール・ヴァレリーの遺言 私たちはどんな時代を生きているのか?』(集英社、2022年7月刊)をめぐる長文の書評であり、ヴァレリーの文明論を子細に読み込んだ保苅のエッセーのもつ現代的な意義について論じたものである。 資料収集の面では、本研究に直接関わる文献としてウィリアム・マルクス編によるポール・ヴァレリー『詩学講義』全2巻(ガリマール、2023年1月刊)のほか、ヴァレリーへの言及が随所に見られるアントワーヌ・コンパニョンの近著数冊、また本研究に間接的に関わる文献としてドイツ占領期の文化政策への関心に応えるベルナール・ファイ関連文献数冊を入手し、一部については読解を進め、新たな研究分野開拓への準備が出来つつある点を評価したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度、2021年度、2022年度の連続三年間は世界的なCOVID-19の蔓延による物理的な影響(移動の制限)を直接的に受けたため、本研究課題の屋台骨であるフランス国立図書館西洋手稿部等における現地資料調査を実施することがかなわず、国内での資料収集と情報収集、論稿の執筆や口頭発表等に集中せざるをえなかったことが、研究の進捗が遅延していることの最大の理由である。そうした強い制限のなかでも、この四年間で本研究に直接関係するテーマでの学会発表や論文執筆等をいくつか実施できた点をよしとするしかないが、お認めいただいた研究の延長期間において、可能な限り、現地調査の機会を確保したいと考える次第である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年3月13日よりマスク着用が個人の判断となり、5月8日以降は新型コロナウィルス感染症がインフルエンザと同じ5類に移行することにより、過去3年間にわたったCOVID-19による制限は、延長研究が承認された本研究の2023年度においては解除される見通しである。2023年度は過去3年間実質的に不可能であったフランス国立図書館西洋手稿部等におけるヴァレリー芸術論関連資料の具体的な調査に早急に着手すると共に、資料調査で得た成果を論稿等の場で公にすべく努力する所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、2021年度、2022年度と三年間にわたり、COVID-19による渡航制限措置の影響等により、本研究の主要な支出項目である海外渡航費(フランス国立図書館西洋手稿部等における資料調査のための旅費)の執行が実質的に不可能であったことが、次年度使用額が生じた理由である。感染症の影響が収まり、渡航制限が解除され、研究の延長が承認されている次年度(2023年度)には、可能な範囲で、フランス現地における資料調査を行うことで、予算を執行する計画である。
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