フランス19世紀末の主要な文学潮流である象徴派は、これまで詩の運動と理解されてきた。だがこの運動が当初、前衛小説の実験として出発したことは忘れられがちである。 本研究では、たんに象徴派の「マイナー」ジャンルとしての小説を検討するのではなく、当時大流行した「小雑誌」と呼ばれる文芸誌を起点として、メディア論の観点と、集団性の観点から、文学史における「象徴派小説」の独特な立ち位置を明らかにした。この作業を通じて、西欧19世紀末前衛の再規定をおこない、社会史的、文化史的視座から、彼らがいかにして文学場における自律性を獲得したのかをつまびらかにした。
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