研究課題/領域番号 |
19K00496
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
吉田 治代 立教大学, 文学部, 教授 (70460011)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コスモポリタニズム / 自然法思想 / エルンスト・ブロッホ / エルンスト・トレルチ |
研究実績の概要 |
前年度、エルンスト・ブロッホにおける「世俗=世界的批評」を、コスモポリタニズム思想の系譜に位置付けながら読み直すという作業を通じて、人間の尊厳を求める「自然法」思想がブロッホにおいて持つ重要性を認識した。2022年度は、ブロッホにおける自然法思想の解明に取り組むと同時に、この文脈でブロッホに大きな影響を与えた人物としてエルンスト・トレルチに注目し、研究でも論じられることのなかったブロッホとトレルチの関係に光を当てた。その成果としては、『ドイツ語圏のコスモポリタニズム―「よそもの」たちの系譜』(共和国)に掲載した論考「歴史への遡行、世界市民的介入―トレルチとブロッホ」が挙げられる。これによって以下を解明した。1. ブロッホにおいて自然法の概念は、アメリカ亡命時代に執筆された『希望の原理』や、ドイツ帰国後に出版された『自然法と人間の尊厳』など後年の著作の中で、権威に対して「まっすぐに立つ」というモチーフと結びついて現れる。しかし第一次大戦時であるスイス亡命期(1917-19)においても、ドイツ帝国の戦争に対峙する中で「まっすぐに立つ人間」像は提示されている。2. ブロッホの自然法論に登場する諸概念は、トレルチに由来する。トレルチは既に第一次大戦前より自然法思想史に取り組み、大戦後には、西洋的自然法を受け入れてヴァイマル時代のコスモポリタニズムに寄与している。3. 第一次大戦期に亡命者となったブロッホは、トレルチの研究も踏まえつつ、a)ドイツのルター的自然法の解体、b)ゼクテ的自然法伝統の想起と活性化を試み、直立歩行する人間が連帯するコスモポリスを構想した。経済的平等を目指す「社会的ユートピア」と並ぶ「自然法」の重要性を後年のブロッホも強調しているが、むしろ人間の尊厳を志向する自然法こそ、社会的ユートピアに先駆けて、その基底をなす、ブロッホの中核となる思想である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の影響により、ドイツでの資料調査ができない状況が続いており、補助期間についてもさらに1年間延長した。最終年度である2023年 度には、ドイツでの調査を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度には、ブロッホの「世俗性」について、彼の「宗教性」とも合わせて研究を進めたい。22年度の研究によって明らかとなったブロッホとトレルチの関係は、この問いへの手がかりとなると思われる。若きブロッホが師事したゲオルク・ジンメルやマックス・ヴェーバー、そしてトレルチの宗教社会学が彼の思想にどのように受け継がれているのか、ブロッホ研究でも手付かずの問題領域である。ブロッホを取り巻く周辺の人物との関係も考慮しつつ、この問いを探求したい。夏には、ドイツのブロッホ資料館、フーゴ・バル資料室にて調査を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、ドイツでの資料調査ができない状況が続いている。また、本務校の研究費によって書籍の購入に充てられるため、未使用額が生じた。2023年度には調査旅費、インタビュー謝金等に使用予定である。
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