| 研究実績の概要 |
本研究課題の最終年度である今年は、まずこれまでの近代ハンガリー文学のカノン化の諸相を振り返った。19世紀初頭からハンガリー文学の活動の諸相として、これまでハンガリー語による新聞や雑誌メディアの発達とそこにおける文学作品の展開、劇場の整備とハンガリー語戯曲作品と外国戯曲文学の翻訳の発達、1848年革命と関連する戯曲作品、19世紀なかばから覚醒したハンガリー民謡の発掘と記録活動などに焦点を当てた。これらさまざまな文学活動が、ハンガリーナショナリズムが覚醒する同じ時期に活発化し、市民社会の変化とともに受け入られていったことが明らかになった。その上で、「正統な文学史」という社会のメインストリームには現れないところで、女性たちがハンガリー語による文筆活動を始めているのも、やはり19世紀なかばであった。本研究では、しばしば「最初のハンガリー児童文学」とも表現されるベゼレーディ・アマーリアの『フローリの本』および自らの家族を重ね合わせた『フェルデシ家の夕べ』という2作品にあらわれる彼女の思想を分析した。そこにはハンガリー語による保育や子女教育の必要性、教育者養成機関の必要性が語られており、国民形成期におけるハンガリー国民の政治的権利要求とハンガリー語による民衆のための保育や教育、そして女性の権利追求が相互に関連しながら強まっていったことが明らかとなった。以上について、「近代ハンガリーの児童文学と女性をめぐる一考察:『フローリの本』とその時代」(『ハンガリー研究』第3号, 37-51)にまとめた。 また、ハンガリー文学史の一環として、20世紀のユダヤ人文学とホロコーストについて次の中にまとめた。「ハンガリーのホロコーストと文学」(『EU百科事典』羽場久美子・田中素香・中西優美子編,丸善出版 298-299)
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