研究実績の概要 |
2019年9月7日~9月21日フランス国立図書館本館にて関連文献の閲覧と複写、分館(site Richelieu)にて、写真関係の資料閲覧と複写を行った。調査の結果は今後の研究に活かす予定である。 本研究の成果は、《 Visage de Rimbaud, visage chez Rimbaud 》, Steve Murphy (dir.), Rimbaud, Verlaine et zut. A la memoire de Jean-Jacques Lefrere, (Garnier, 2019年, p. 317-336. )及び「朔太郎の肖像、『月に吠える』のなかの「顔」」(萩原朔太郎会報『SAKU』第84号、新装第5号、2019年10月発行、p. 81-96.)に、査読と推敲を経て論文として発表した。 前者を所収するのは、ロートレアモンの写真を発表したことで知られるジャン=ジャック・ルフレールの追悼論文集であり、35名の執筆者が寄稿、査読付きである。2010年ルフレールが公表したランボーの写真が話題を呼んだことを出発点に、第一部で詩人の顔写真と詩の関係を考察、第二部ではランボーが作品のなかで顔をどう扱っていたかを論じるが、ヴェルレーヌ、ボードレールとの比較も試みた。 後者は、詩人の顔写真の伝播と詩人による「顔」の表象という同一のテーマで、萩原朔太郎を論じたものであり、本研究の課題である「フランス象徴主義と日本近代詩の比較研究」に相当する。顔写真の普及という近代化の一指標のもとでの両詩人の比較は妥当である。前半で、教科書に掲載されている作者の顔写真、文学者の肖像写真の始まり、「アサヒカメラ」の興隆を扱い、後半では朔太郎が作品のなかでどのように「顔」を表しているかを検証しているが、さらに先行研究で指摘されている朔太郎とボードレールの比較に新たな一面を加えることに成功した。
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