研究課題/領域番号 |
19K00504
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩下 綾 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 准教授 (40633821)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 描写技巧 / フランスルネサンス建築 / ラブレー |
研究実績の概要 |
本研究課題初年度となる2019年度は、コロナウィルスの影響でフィールドワークが不可能となったため、主に資料収集、資料読解・調査を行った。 フランスにおけるルネサンス建築が、中世からのフランス・ゴシック建築の土台にイタリアの装飾を施す、というハイブリッドから創始されていることから、資料収集においては、16世紀のフランス・イタリア間の交流に関する文献、君主と芸術コレクションに関する文献を中心に収集した。次年度も引き続き収集を続ける。 資料読解・調査に関しては、フランソワ一世の治世において代表的な城に関わった人物関係の整理および装飾・図像プログラムの調査を行った。具体的には、ロワール川流域に宮廷の中心を置いていた時代の代表的な城の一つであるシャンボール城の築城経緯と装飾の特徴、パリ近郊に移ってからの代表的な城の一つであるフォンテーヌブロー城、とりわけフランソワ一世の回廊の図像プログラムの調査を行った。 また、フランソワ・ラブレー作品初期二作品の描写技巧読解を進めた。特に『第一の書ガルガンチュア』に登場するテレームの僧院が正六角形を形成していることから、同時代の類似する城塞や建築物を調査し、それらに関係する建築家や枢機卿、教皇と作家が実際に接触した可能性を検討した。 並行して、フランス16世期における身体と感情に関する著作の一部翻訳を行ったが、本研究の根本にある人間の想像力とその現実への影響を考察するにあたって示唆に富むものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在並行して育児をしているため、もともと研究のペースを抑えて設定している。2020年3月に予定していたフランス出張が、コロナウィルスの影響で中止となった。その際に参加予定だった文学と造形芸術をテーマにした学会や研究会のセッションも中止、資料収集も不可能となり、研究を予定していた時間をコロナウィルス対応の仕事に割かざるを得なくなった。その反面、日本において、出張時に予定していた研究打ち合わせをオンラインに変更して実行し、また文献読解と本研究のコーパスの一つであるラブレー評論の翻訳を進めることができた。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後しばらくはフィールドワーク及び海外での資料収集が不可能だと思われるため、入手可能な資料収集と文献読解を着実に進めることが研究推進の手段となる。2020年度は文学と造形芸術との間の共通の理論基盤を調査するため、修辞学と造形芸術に関する文献収集と、二次資料の読解を進める。また、2019年度に行ったフランソワ一世をはじめとした16世紀前半の有力者の城に関する装飾・図像プログラム調査も継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で2020年3月に予定していたフランスでの学会参加・資料収集が中止となり、旅費・宿泊費・日当が不要となったため。次年度、フィールドワークが可能になり次第、資料収集のための旅費に充てたい。フィールドワークが不可能な場合は、君主と芸術コレクションに関する資料の購入費および論文発表のための校閲料に充当する予定である。
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