研究課題/領域番号 |
19K00507
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
坂本 貴志 立教大学, 文学部, 教授 (10314783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 世界知 / 自然史 / 普遍史 / 世界の複数性 / 永遠の哲学 / 古代神学 / ゴットシェート / キルヒャー |
研究実績の概要 |
本研究の問いは、「博物学から自然史への変貌の過程でドイツ近代の知性に特徴的であるのは、宇宙及び地球の形成の歴史を包括的な自然史として探究する一方、聖書に支えられたかつての「普遍史」をヴァージョンアップする形で宇宙における普遍的な歴史の可能性を構築しようとしたのではないだろうか?」というものであった。ドイツ語圏の思想家についてバロック期から啓蒙主義期まで検討した結果、自然史を哲学的考察の対象として、それが「世界知Weltweisheit」という、ドイツ語母語の学問として形成され、その過程は、トマージウス、ヴォルフ、ゴットシェート、カントに即して後付けが可能である、ということが明らかになった。その過程の中で決定的なものとして浮かび上がったのは、時空間についての認識形式の変容というものであり、有限から無限へ、という形式の変容こそが、この期間を通してなされ、この変容を自覚した結果が後期カント哲学の内容となる。なかでも自然史を時間的な無限の枠によってとらえる困難さこそが、普遍史へのさまざまな関わりを通しては認識された。「宇宙及び地球の形成の歴史を包括的な自然史として探究する」のは、普遍史からの決別と並行し、汎ヨーロッパ的な知的探究であったことが了解された。また普遍史はカントとヘルダーにおいて、目的論的な歴史哲学へと変換されるが、その理論には、新しく認識されることになった自然史との接続の意識が明確に見て取れ、その意味では、「普遍史」のヴァージョンアップされたものが、彼らの宇宙論的な自然史となる、というテーゼは正しいことが明らかになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
疫病により海外で予定していた研究資料の調査を行う代わりに、すでに入手することのできた資料によって研究を遂行し、研究結果を書物および論文にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究成果が書物として刊行されるので、そのための校正作業が年度前半の仕事となる。一方、本研究成果は比較文化の観点で応用的研究が可能であるので、普遍的な自然史の構築というヨーロッパの問題を、異文明である江戸期の日本の知性はどのように見たのか、というテーマへと発展させ、海外の研究資料ではなく、日本国内に現存する資料にアクセスする方法を考えて、現今の状況下でもさらなる成果が得られるように新たな工夫を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、疫病により海外へ研究資料調査旅行ができなかったためである。一方、これによって生じた繰越額は、研究期間を延長することで、海外調査旅費としてあらためて使用するほか、文献の購入対象を再検討し、また国内での調査旅費へと振り替えていくことにする。
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