研究課題/領域番号 |
19K00507
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
坂本 貴志 立教大学, 文学部, 教授 (10314783)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 世界知 / 古代神学・永遠の哲学 / 世界の複数性 / 普遍史 / 自然史 / キルヒャー / ゴットシェート / ゲーリケ |
研究実績の概要 |
研究内容を著書として以下のように公表した。キルヒャーからゲーテまでに至るドイツ語圏の博物学的な知の展開を「世界知Weltweisheit」として捉え、それがピュタゴラス的な知の伝統である古代神学へと遡及する一方、また啓蒙主義期のドイツの哲学と文学とに接続される様を明らかにした。ヨーロッパのバロック期から啓蒙主義期にかけての、時間と空間についての観念が根本的に変容したことを示し、この変容に付随して、人間が抱く歴史観と、世界の中での人間存在の位置づけとが変更された様を、ドイツ語圏に出自をもつ思想家と文学者たちの様々なテクストをもとに跡づけた。トマス・クーンは、コペルニクスによる世界像の革命を説得的に描き出したが、本書はこれに加えて時間像の変容が科学革命の時期に世界像の変容と歩調を合わせつつ生起し、しかしなおより大きな困難を伴ってようやく完遂されたのを示した。カントは『純粋理性批判』の中であらゆる人間に共通の認識の枠組みとして、時間と空間とをデカルトの座標軸のような、一種の物差しとして提起したが、無限の時間と空間とが物差しとして純粋に機能するためには、それらがともに神学からは独立したものとなる必要があった。というのも、聖書は「普遍史」と呼ばれる、一元的な歴史の枠組みを強固に提起する源となり、世界の全歴史は、自然史をも含めてせいぜい六千年ほどと見積もられていた。また一方、閉ざされた、有限なる世界空間-その中心に位置する地球の上でただ一度キリストによる贖罪がなされた-は地動説がもたらす新しい宇宙世界像によって根本的に変容する。世界観の変容の時代に世界を統一的に眺める必要から、「普遍的種子(キルヒャー)」、「普遍自然史(カント)」、「有機的な力(ヘルダー)」、「メタモルフォーゼ(ゲーテ)」といった「世界知」が、様々に展開された様を著書を通して示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目標とする普遍自然史を考察するための概念として「世界知」を明確にし、その内容を著書として公表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究対象を拡張して、「世界知」の様相をさらに詳らかにする。具体的には、バロック期における「世界知」のあり方に関して、カトリック側での反応が多用である可能性を検討する。方や「世界知」のロマン主義期における有り様を、新しく研究する必要があると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
パンデミーのために、当初予定していた海外研究施設で研究を遂行することができなかった。2022年度中にはこの予定を実現する。具体的には、ヴァチカン図書館とヴォルフェンビュッテル・アウグスト公図書館における資料調査研究である。
|