研究課題/領域番号 |
19K00510
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
真野 倫平 南山大学, 外国語学部, 教授 (30257232)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 仏文学 / ジャーナリズム / 現代史 |
研究実績の概要 |
本研究では、両大戦間期に活躍したフランス人ジャーナリスト、アルベール・ロンドルのルポルタージュを通じて、ジャーナリズムが社会に与える影響について考察する。ロンドルは、徒刑場、精神病院、軍隊刑務所、植民地、国際売春組織などに潜入取材を行い、その悲惨な現状を明るみに出した。これらのルポルタージュは世論を強く動かし、さまざまな社会改革を実現させるにいたった。ジャーナリズムの歴史において、それらは「ルポルタージュ文学」の先駆的作品として重要な意義を持つ。とはいえ彼の仕事についての学術的研究は、文学と歴史学のいずれの領域においてもあまり進んでいない。本研究では、文学と歴史学を総合する学際的な観点から、ロンドルのルポルタージュの社会的影響を再検討することで、ジャーナリズムと権力の重層的な関係を解き明かすとともに、われわれを取り巻く現代のメディアのあり方についても再考を試みる。 2019年度の活動としては、まず、ロンドルならびに同時代のジャーナリズムに関する関連文献を国内外の書店から購入した。また、8月および1月にフランスに国外出張を行い、フランソワ・ミッテラン国立図書館などで資料調査を行った。さらに、各種書店において資料調査を行うとともに、現地の研究者と協議を行った。また、ヴィシーのアルベール・ロンドル記念館と連絡を取り、情報交換を行った。 研究成果としては、ロンドルの著作の分析を進めると同時に、ジャーナリズムや三面記事について研究を行った。その過程で、現代の三面記事を題材にしたイヴァン・ジャブロンカ『レティシア』についても考察を行った。その成果をまとめて、2020年3月刊行の『南山大学ヨーロッパ研究センター報』第26号に論文「歴史家の目がとらえた三面記事事件-イヴァン・ジャブロンカ『レティシア』について-」を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査・収集、ロンドルの著作の分析、ジャーナリズム関連資料の読解についてはおおむね予定通りに進展している。ただ、コロナウィルスの流行により3月に予定していたフランス出張を中止したため、資料調査に若干の遅れが生じた。とはいえ、その間に日本で資料読解に専念したため、全体には研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルスの流行の影響で、参加予定であったいくつかの学会(5月初頭にフランスで予定されていたロンドル学会、5月末に東京で予定されていた日本フランス語フランス文学会など)がすでに延期または中止が決定している。また夏休みに予定していたフランスへの研究出張も中止せざるをえない状況であり、資料調査などにかなりの影響が出ている。とはいえそのぶん、日本において資料読解ならびに分析の作業に専念するつもりである。具体的には、ロンドルの著作の読解を進めるとともに、ジャーナリズム史および歴史記述に関する研究を継続し、研究成果を論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた研究出張費を2019年度予算からではなく2020年度予算から支出することにしたため。ただし当該出張はコロナウィルス流行のために中止したので、旅費および宿泊費のキャンセル料を2020年度経費から支出する予定である。
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