研究課題/領域番号 |
19K00514
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
宇戸 清治 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (30185053)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ターオ・フン、ターオ・チュアン / メコン川流域 / 英雄叙事詩 / ラオス古典文学 / 東南アジア文学 |
研究実績の概要 |
当該年度に実施した研究のうち主となるのは、2019年12月と2020年2~3月の2回にわたりタイおよびラオスで実施した現地調査、研究者との学術交流、関連資料収集、3年間の研究の基礎となるデータベースの作成である。 具体的には、12月にはタイ国立図書館古文書館で、本研究・翻訳作業の中核となる文献『貝葉書原典からの写本ターオ・フン、ターオ・チュアン(以下、TFTCと記述)』を複写できた。チュラロンコーン大学では文学部主催セミナー「地方文学の世界を開く:ラオス文学」の合冊史料の提供を受けたほか、チェンマイ大学で行われた11~12世紀の北タイ史と叙事詩「TFTC」の関連を論じた世界中の研究者による論文集『TFTC関連資料集成』を入手できた。 2~3月の現地調査にによって得られた大きな成果は、ラオス国立大学文学部のラオス文学担当のマイポーン・ドアンパシー准教授からのレクチャーと同氏編集の『ラオス文学概説』などの痔津王提供と料提供、今後の研究活動への全面協力の確約を得たことである。ラオスではさらに、「TFTC」貝葉本の研究と紹介で世界的に著名な在野の歴史家ドアンドゥアン・ブンニャーウォン氏(福岡アジア文化賞受賞者)からは個人所蔵の貴重な関連資料の複製の提供と、今後の研究へと翻訳に全面協力するとの言葉をいただけた。このほかタイでは、タイ北部および東北部地域における「TFTC」関連資料の地方での存否や保存状況について古文書専門家より情報提供を受け、そのリスト作成や調査に必要な地図などの複写を行った。 当該年度に実施した研究活動によって、本課題研究に大いなる道筋が立ち、貝葉本を元にタイ語訳された研究書などを参照しつつ日本語への翻訳も早速開始することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中核をなす文献資料の内、『貝葉本原典からの写本ターオ・フン、ターオ・チュアン』(古ラオス語)とそのタイ語訳(複数)の複写版が初年度で収集できたことは大きな成果であった。さらに現地調査によって、当初は予期していなかった当該叙事詩に関する2つの異なる国際セミナーの資料集成が入手できたことも研究に弾みをもたらした。以上のより、初年度(2019年度)における研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)『貝葉本原典からの写本ターオ・フン、ターオ・チュアン』(古ラオス語)に関する研究書やセミナー資料の解読と分析を基に、本叙事詩の時代背景、登場人物の民族構成、地政学的な位置、当時の経済活動、統治機構などに関する知見を得たうえ、必要な分析手法を決める。 (2)プラーモート・ナイチット編訳『叙事詩ターオ・フン、ターオ・チュアン』(現代タイ語)に依拠して日本語翻訳を進める一方、ラオス語原本の記述内容との比較研究を行う。 (3)上記の比較研究で明らかとなった課題をラオス国立大学研究者及び在野研究者とのセミナーで論じ、一定の結論を得られれば論文や研究ノートとしてまとめ、公的に発表する。状況が許せば、2020年度中にふたたびラオスでの現地調査を行う予定である。
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