本研究は、富山大学附属図書館所蔵小泉八雲旧蔵書(以下ヘルン文庫)の中でもフランス語で書かれた本(洋書1350冊のうちの719冊)を中心に書き込み調査を行い、それらの書き込みがハーンの著作にどのように反映されているかについて考察を行うものである。これまでの研究で、ハーンの蔵書や書き込みの内容が、アメリカ時代の新聞のコラムのソースとなっていたことや、東京帝国大学での講義のもとになっていたことなどが判明しているが、本研究はさらに、ハーンがアメリカ時代の早い時期から関心を抱いていたフォークロア研究を中心に調査を行うものである。これまで取り組んできたヘルン文庫の書き込み調査をさらに推進させ、書き込みの内容がハーンの著作にどのように反映されているかについて分析と考察を行う。今回はまず、ハーンがアメリカ滞在時代に書いた新聞記事とヘルン文庫の書き込みの関係に着目して調査を行いたいと考えている。また、この研究を補完する草稿類や執筆メモなどの資料が米国ヴァージニア大学に収蔵されているので、現地に赴いて草稿類の調査を行いたい。このようにして得られた結果をもとに論文等の執筆を行い、ハーンにおいて読書と創作が、同時代の民俗学研究を媒介項としてどのように連関しているのかについて考察を行いたい。 2019年度は、書き込み個所のデータ化と記録を継続すると同時に、米国ヴァージニア州立大学を訪れ、現地に収蔵されている草稿類の調査を行う。また、シンシナティで新聞記事等について調査し、得られた成果について分析と考察、発表を行う。2020年度は、書き込み調査の継続の他、マルティニークで現地調査を行うと同時に、これまで得られた成果を現地の国際学会で発表する。2021年度は、これを踏まえてさらに書き込み調査を推進させると同時に他のフランス語圏にでも現地調査を行う。
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