研究課題/領域番号 |
19K00516
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小島 基洋 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90438333)
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研究分担者 |
山崎 眞紀子 日本大学, スポーツ科学部, 教授 (00364208)
高橋 龍夫 専修大学, 文学部, 教授 (10284340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 村上春樹 / 戦争 / 世界文学 |
研究実績の概要 |
初年度(2019年度)は、研究分担者同士での意見交換をしつつ、各分担者が個々に設定したテーマ研究を進めた。小島は村上春樹作品の多言語性について、髙橋はその歴史性について、山﨑は戦後文学の系譜との関わりにおいて、各々が村上文学に関する考察を深化させていった。 小島と髙橋は、各自のテーマに造詣の深い外部講師を招聘し、研究セミナーを主催した。4月20日に京都大学で開催された第2回村上春樹研究セミナー〈言語と文化とメディアを超えて〉には、秋草俊一郎氏、山根由美恵氏を招聘した。秋草氏は世界文学の理論的基盤と、その中での村上春樹の位置づけを、山根氏は、短編「納屋を焼く」の韓国での映像化作品についての具体的な考察を発表し、来場者と共に日本語を超えた位相での村上文学の受容状況について理解を深めることとなった。9月21日に専修大学で行われた第3回村上春樹研究セミナー〈記憶を語り, 歴史を紡ぐ〉には、奥田浩司氏、小山鉄郎氏を招聘した。奥田氏は、村上がプリンストン大学の図書館で読んだノモンハン戦争の記録が『ねじまき鳥クロニクル』に及ぼした影響を、小山氏は、主に第二次世界大戦の経験が『風の歌を聴け』から『1Q84』に至る村上作品の全キャリアに影を落としていることを指摘し、村上文学を二十世紀史の中で読み解く道筋が明確に示されることとなった。奥田氏の論考は論文化され、研究分担者で編集するWEB雑誌『Murakami Review』第一号に収録されてる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2回のセミナーを通して、国際性と歴史性という双方向から村上文学の本質に迫ることができたものと考えられる。今後、さらに戦後文学、物語論という視点を導入していくことにより、国の内外で受容される村上作品を立体的に捕捉していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、折からの新型コロナ・ウィルスの影響で、海外渡航が難しくなることが予測され、研究計画が大幅に変更される可能性がある。横道(2020年度より新たに研究分担者となる)と山﨑は、各自が主催する物語性と戦後文学についての研究セミナーに海外からの研究者を招聘することを予定しているが、現段階では実施が危ぶまれている。また夏に研究分担者4名全員で予定していた米国プリンストン大学での図書館調査も実現は難しい状況である。したがって2020年度はセミナー開催や海外調査の休止も視野に入れ、各分担者が自らの設定したテーマを探求することを重視していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた分担者が一名、休職した関係で、全体の使用額が減ることとなった。
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