研究課題
基盤研究(C)
本研究課題は、これまで日露比較文学研究において明治期から大正中期に考察が集中していたことに鑑み、大正後期から昭和期の文学史的・類型論的な考察を試みたものである。特に昭和前期の日本プロレタリア文学運動における徳永直へのゴーリキーの影響、太平洋戦時中の本多秋五のトルストイ『戦争と平和』論の経緯と思想的な文脈の考察に優れた成果を挙げることができた。
比較文学 ロシア文学
本研究課題は、これまで明治期から大正中期に集中していた日露比較文学研究の空白を埋めることを意図するものであったが、特に大正末期から昭和戦前期の考察において、この目的をある程度達成できた。ロシア文学は近代日本文学と近代文章語の形成に大きく作用したが、その影響には以後も思想・哲学・文学において大きなものがあった。戦争という極限状況下での作家たちの思想的営為を考察したことは、戦争と紛争の脅威が高まりつつある現代において一定の社会的意義を有する。