研究課題/領域番号 |
19K00519
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長崎 広子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (70362738)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒンディー文学 / アワディー / ラージャスターニー / ブラジ・バーシャー / スーフィー文学 |
研究実績の概要 |
古ヒンディー文学の海外の研究者(Imre Bangha、Alexandra Turek、Jaroslav Strnad)と長崎広子との共同で、古ヒンディー文学のテキスト解釈を統一した形式でまとめ、地域差と文学様式の異なる15-6世紀のヒンディー文学を共時的に比較考察しその全体像を明らかにする目的で、古ヒンディーの方言(アワディー、ブラジ・バーシャー、ラージャスターニー、さらに新たに存在を認められつつあるMaru Gujari)のサンプル・テキストを選択し、英訳、文学的解釈の説明を加え、語彙集とテキストを作成した。 ロシアのセント・ペテルブルグで開催された第6回Braj Bhasha/Early Hindi Workshopに3名全員が参加し、3名が研究成果の発表の一環として自身の作成したテキストを用いた講読を行った。Imre Banghaは最初期のヒンディーと考えられるMaru Gujari方言のによるジャイナ教商人伝Sruta Pancamiを、Alexandra Turekはラージャスターニのディンガラ文学のKrisana-Rukamani-ri veli Rathaurra Pthviraja-ri kahi を、Jaroslav Strnadは14世紀詩人KabirのBijakを講読した。 長崎はAbdur Rahim Khan-e Khanaの二行詩dohaをとりあげ、修辞用法の重層的意味解釈をグロス付与と文学的解説を加えてテキストの作成をした。また、東部ヒンディー方言の散文文学Mul Gusain Caritaを抜粋して語彙とグロスを付与して講読テキストを作成した。 成果公開用のサーバーにてテキストの一部を公開した。 古ラージャスターニー文学におけるサントの思想について、古ヒンディー文学研究者Monika Horstmann博士を招いて講演会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
夏にブラジ・バーシャー研究会で3名がセッション・リーダーとなり、それぞれの専門分野のテキスト作成とその講義を行った。またそのテキストの一部を成果公開用のサーバーにて公開した。 海外研究者3名との研究会と実際の作業を行うために出張予定を組んだが、体調不良とコロナ・ウイルスの流行で年度末に予定の会議が開催できなかったため、それぞれのテキスト作成は進んでいるものの、グロス付与等の統一した方法がまだ確定できていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、本研究の4名の研究者がテキストを講読して統一方式を確定するための研究会を年に複数回開催する予定であった。しかしコロナ・ウイルスの流行によって海外の研究者との共同研究のための会議を開催するには、当面の間ウェブ会議のシステムを利用する。また、それぞれの進捗状況をメール等でのやりとりによって行う。 本務校での研究および教育がオンライン化されたことにより、本研究の成果を教育面で活用する方策を講じる。具体的には、今後さらにオンラインによるテキスト公開の必要性が高まることを鑑みて、4名が作成したテキストを研究成果公開用のサーバーにて順次公開し、実際に教育面で利用する。また、当初予定していた紙媒体での出版に加えて、オンライン上でも古ヒンディーの学習効果をあげられるように、テキスト公開の形式に工夫を加えるべく適宜検討する。 コロナ・ウイルスの感染拡大が収まった場合には、当初予定していたオックスフォード大学と大阪大学での研究会を開催する。また、必要に応じてインドでのテキスト収集を行う。 本研究に関わる内容での研究発表や論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究会が、研究者の体調不良によって延期され、またコロナ・ウイルスの流行によってさらに延期になった。また研究代表者が予定していたインドでの写本とテキスト調査もコロナ・ウイルスの流行によって延期になった。今後事態が改善した際には研究会を開催し、旅費として使用する。 事態の早期の改善がない場合には、海外の研究者とのオンライン上での会議を円滑にすすめるために、会議システムの設備拡充を検討する。
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