本研究は、東アジアという観点から、より具体的には「1965年」「東アジア」「離脱と帰属」という観点から、在日朝鮮人文学と沖縄文学を比較検討することを目的とするものである。具体的には、(1)1965年、在日朝鮮人社会と沖縄が、東アジアという場の中でどのように位置づけられ、(2)その際両者の文学が「離脱と帰属」を志向しつついかに東アジアという空間を批判的に問い、また構想していたのかを問うてきた。 2021年度は、「1965年」「東アジア」における沖縄文学と在日朝鮮人文学の「離脱と帰属」様相の解明を目的とした。沖縄文学においても、在日朝鮮人文学においても1965年を契機として「離脱と帰属」がキータームとなっている。しかしながら沖縄文学では米軍統治からの離脱、在日朝鮮人文学では日本、そして南北朝鮮からの離脱というように両者においてはその意味が異なっていた。そのため両文学の作品分析を通じて「離脱と帰属」の差異を明らかにした。それとともに関連する「民族的主体の確立」「伝統と創造」「第三世界との連帯」等のテーマの分析を通じて、両文学が「東アジア」をどのように捉え、また新たに構想していたのかを総合的に明らかにすることを試みた。沖縄文学に関しては、大城立裕、霜多正次、牧港篤三や『新沖縄文学』『琉大文学』等に掲載された作品群を収集し分析を行った。在日朝鮮人文学に関しては、李殷直、金鶴泳、金石範といった文学者や雑誌『朝陽』『白葉』等の作品を収集し分析を行った。
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