研究課題/領域番号 |
19K00525
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
呉 衛峰 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90458159)
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研究分担者 |
井上 健 日本大学, 国際関係学部, 研究員 (30121867)
西槇 偉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50305512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 華文俳句 / 俳句 / ハイク / 中国語現代詩 / 短詩型 / モダニズム / 翻訳 / 比較文学 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究は概ね計画通り進めることができた。計16点の実績のうち、一番重要なのは、2019年12月14日に熊本大学で開催されたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」という公開の研究集会である。 ラウンドテーブル「華文俳句の可能性」には、呉衛峰(研究代表者)、井上健(研究分担者)、西槇偉(研究分担者)、および洪郁芬(研究協力者)が参加し、外部からは日本俳人協会幹事・同熊本支部長の永田満徳を講演者として招聘した。 同ラウンドテーブルにおいて、呉は「華文二行俳句とは何か」という題で発表し、「切れ」を俳句美学の本質と確認したうえ、それを取り入れた華文二行俳句の斬新さと意義を説明して、截句などその他の現代中国語短詩型との違いを明らかにした。西槇は「『華文俳句選』を読む」という題で同句集を評釈し、漢俳より俳句の本質と形に近いと結論してから、季語と季語集の必要性を指摘した。井上はディスカッサントとして、主に二点の意見を示した。一点目は、華文二行俳句は1920年代前後のモダニズム(イマジズム、モンタージュなど)およびそれ以降の世界の芸術運動につながると評価できることである。二点目は、国際ハイクを論じる場合かならず翻訳の問題が絡むが、ラングつまり言語構造より、パロールつまり限られた環境の中の発話のほうが、「等価値性」を考える上でより現実的だということである。この考え方は俳句の翻訳の問題、しいて言えば、外国語における俳句の移植の問題にも適用できるはずである。 代表者・分担者の個別研究としては、呉は台湾詩人陳黎が現代中国語で翻訳した芭蕉の俳句を考察し、詩人による「創造的誤訳」が中国語現代短詩型に俳句の影響を与える可能性を分析した。成果は学会発表および研究ノートで公にされている。西槇は俳句と西洋文学との比較研究をつづけており、書評で俳句の特異性と普遍性という問題意識を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は計16点の実績を挙げ、計画通りに進められた。呉の実績:(1)、研究ノート「中国語圏における俳句の影響について――俳句の中国語翻訳を中心に(その一)」東北公益文科大学総合研究論集37号増刊、2020年3月。(2)、書評「『華文俳句選』――瞬間を詠む中国短詩型の実験」同上36号、2019年7月。(3)、特別レポート「ラウンドテーブル「華文俳句の可能性」」月刊『俳句界』2020年3月号。(4)、学会発表「詩人陳黎的華文俳句及日本俳句翻訳」、中国日本文学研究会創立40周年記念国際シンポジウム、2019年10月19日(於山東師範大学、中国・済南)。(5)口頭発表「華文二行俳句とは何か」、ラウンドテーブル「華文俳句の可能性」。 西槇の実績:(1)書評「西槇偉が読む『俳諧の詩学』川本皓嗣著」熊本日日新聞、2020年1月26日朝刊。(2)口頭発表「森鴎外の文学と植民地」、第9届文学倫理学批評国際学術研討会、2019年11月9日(於浙江大学、中国・杭州)。(3)口頭発表「『華文俳句選』を読む」、ラウンドテーブル「華文俳句の可能性」。 井上の実績:(1)ディスカッサント、ラウンドテーブル「華文俳句の可能性」。(2)(3)(4)は3点の口頭発表である。(6)『森鴎外事典』項目執筆。 洪の実績は以下の通りである。(1)単著『華文俳句集 渺光之律』2019年10月(醸出版、台北市)。(2)口頭発表「華文俳句社における華文二行俳句の実践」ラウンドテーブル「華文俳句の可能性」、於熊本大学。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は当初の研究計画通り、(1)漢俳と華文二行俳句との位相の相違についての研究、(2)中国語俳句を英仏中心の欧米ハイクと比較する研究を進める。研究の進捗状況を踏まえて、成果の取りまとめも視野に入れた研究打ち合わせを行う。打ち合わせの場所や方法については、状況に応じて柔軟に対処する。当初発表が予定されていた8月の海外学会(武漢大学)が2021年に順延されたので、海外発表および海外(台湾など)における研究調査の時期等についてはあらためて調整する必要がある。 2021年度は計画通り、芭蕉の作品を代表とする古典俳句の翻訳と中国語圏における俳句の受容について研究を進める。さらなる成果発表、成果の書籍化などの作業に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者は研究旅行の費用を予定どおりに使用したが、物品や書籍等の購入の一部を2020年度に繰り下げて、研究の進捗に合わせて行う予定である。 よって、残額は2020年度に書籍等の物品費に使われる計画となっている。
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