研究課題/領域番号 |
19K00525
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
呉 衛峰 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90458159)
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研究分担者 |
井上 健 日本大学, 国際関係学部, 研究員 (30121867)
西槇 偉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50305512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 比較文学 / 蘇山人 / 漢俳 / 俳句の中国語訳 / 翻訳理論 / 中国語俳句 / 季語 / 現代短詩型 |
研究実績の概要 |
2021年年度は、概ね計画通り進めることができたと思うが、研究出張、とくに海外発表および海外研究調査ができなかったので、当初の計画よりやや遅れている部分もある。当該年度の一番重要な業績は、3月6日に、本科研費によるオンライン国際シンポジウム「中国語圏における俳句の受容」である。 同シンポジウムにおいて、呉衛峰(研究代表者)、井上健(研究分担者)、西槇偉(研究分担者)が参加し、外部からは木村聡雄(日本大学教授)、金中(中国・西安交通大学教授)、田建国(上海杉達学院教授)をパネリストとして招聘した。 同国際シンポジウムにおいて、西槇は「蘇山人の俳句を読む」と題して、田建国は「漢俳について」と題して、呉衛峰は「1990年代以降の中国語圏における俳句の受容」と題して、金中は「「一語一句」の形式による俳句の中国語訳」と題して、木村聡雄は「欧米俳句の歴史と特徴」と題して、井上(モデレーター)は「俳句研究と翻訳研究」と題してパネリスト発表した。通時的には1900年前後から現在までの中国語圏における俳句の受容と実践と、共時的には欧米俳句との比較、翻訳研究の視点による俳句研究と、幅広い研究発表だった。 分担者の井上は、シンポジウムのモデレーターをつとめた一方、俳句翻訳を語るための理論的枠組みを実例を挙げて示した。 分担者の西槇は、シンポジウムで発表した蘇山人(俳人、正岡子規の中国人弟子)の資料を掘り下げ、論文としてまとめる途中である。 個人的に、代表者の呉は、「中国語圏における俳句の影響について――俳句の中国語訳を中心に」(その二)と(その三)と、日本の研究ノートを発表した。口頭発表としては、「日本俳句浅談」と題して、山東師範大学においてオンライン招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一年間の研究で、2019年度末の計画に見合う成果が出たと思われる。国際シンポジウムが成功裏に収まったほか、呉衛峰(研究代表者)は芭蕉の翻訳を中心に二つの論考を発表し、洪郁芬(研究協力者)は初めての中国語俳句歳時記『歳時記』を共編して世に送った。西槇(研究分担者)は蘇山人という最初の中国人俳人の資料を発掘し、掘り下げていけば大きな成果につながると考えられる。井上(研究分担者)は俳句翻訳を語る理論的枠組みという大きな仕事に取り掛かっており、中国語翻訳および中国語俳句もその枠組みで語られることになるであろう。 ただし、本研究は最初から中国本土および台湾への実地調査を研究の大事な部分としており、コロナ禍で現時点ではそれが実現できず、2021年度にそれが実現する状況になるか、それとも海外調査に代わる代替的調査方法を案出する必要が感じられる。
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今後の研究の推進方策 |
一、中国における芭蕉の受容の考察から、季語の受容・中国語俳句における季語の問題を提起し、比較文学的視点より、日中の文学伝統における四季の問題を研究し、比較する。 二、蘇山人、葛祖蘭など、明治から戦前まで日本語で俳句を詠んでいた中国人俳人の資料の発掘につとめる。 三、コロナ禍がゆえに十分に調査できなかった中国本土および台湾などの、中国語圏現代詩における俳句の影響をもっと踏み込んで調査し、その影響のあり方を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
一、次年度使用額が生じた理由:コロナ禍によって、研究出張、とくに当初予定されていた海外発表および研究調査の海外出張ができなくなったためです。
二、使用計画:令和3年度に研究出張(海外出張を含む)ができる環境になった場合、「次年度使用額」をその費用に充てる予定です。年度中に状況が改善されない場合、国内外からの研究資料の取り寄せおよびオンラインシンポジウムの開催等に充てる。
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