研究課題/領域番号 |
19K00528
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
片岡 大右 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師(非常勤) (30600225)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロマン主義 / ポール・ベニシュー / 加藤周一 / 三島由紀夫 / リュック・ボルタンスキー / クリスチャン・ボルタンスキー / 『ゲーム・オブ・スローンズ』 / デヴィッド・グレーバー |
研究実績の概要 |
① フランス・ロマン主義研究について。ポール・ベニシュー『預言者の時代』の監訳作業は現在佳境に入っている。また、スタンダールとシャトーブリアンをめぐる研究論文を発表した(「「人間であるとはひとつの党派である」とはどういうことか?」、「有名性/無名性のゲームとその解体」)。 ② 加藤周一研究について。日仏会館における生誕100周年の国際シンポジウムで報告を行い(「非ヘーゲル的な夕暮れへの招待」)、立命館大学の加藤周一文庫の協力を受けつつ著書の準備を進めた。また、三島由紀夫没後50年を記念する論集『三島由紀夫1970』のために加藤の三島論の再録を提案し、解題「加藤周一と三島由紀夫」を発表して、両者の関係を日本的近代とロマン主義受容の観点から問い直した。 ③ 批判の主題について。リュック・ボルタンスキー『批判について』の翻訳は現在校正中であり、関連する重要な講演「批判の大義」の翻訳はすでに公表された(『人文・自然研究』14号)。また、この社会学者の弟の高名な現代美術家クリスチャン・ボルタンスキーの大回顧展開催を機に、兄弟の仕事の関係に注目する観点(フランス語圏では最近重視されるようになったものの、国内では前例がない)から展覧会評を兼ねた論考を発表した。『文學界』2020年2月号掲載の『ゲーム・オブ・スローンズ』論では、権力批判の文化的表象の問題が考察された。さらに、デヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について』の翻訳を進め、刊行に目処をつけることができた(2020年4月に既刊)。同書は日本的近代をめぐる議論にも大いに貢献しうる著作である。 なお秋には京都の加藤周一シンポジウム傍聴や幾つかの現代美術展鑑賞のために複数回の出張を行い、そこで得たものの一端を雑誌『図書』(2020年4月号)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『預言者の時代』と『批判について』を2019年度内に刊行することはできなかったものの、作業は佳境に入っている。その一方、申請時には予定されていなかったグレーバーの著書の翻訳を完成させたことで、以後の本研究の内容は想定以上に実りあるものになる。加藤周一研究についてはおおむね予定通りに進捗している一方、三島由紀夫という重要な比較項を得たことで、議論をいっそう充実させることができた。リュック・ボルタンスキー論の執筆は2020年度に持ち越されるが、弟クリスチャンをめぐる画期的な仕事を発表することができた。こうして、いくつかの点での遅延と想定外の進展の双方を考慮するなら、「おおむね順調に進展している」と自己評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
『預言者の時代』と『批判について』の翻訳は2020年度中に刊行する。加藤周一研究の単著についても、同年度中の刊行を目指す。その一方、2019年度に新たに獲得された観点や研究対象(とりわけ、現代美術や現代ポップ・カルチャーへの領域拡張、グレーバーの議論の導入による人類学的視野の獲得)との関係でのさらなる研究の充実を企てていく。
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