研究課題/領域番号 |
19K00533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安元 隆子 日本大学, 国際関係学部, 研究員 (40249272)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金子文子 / 『何が私をこうさせたか』 / 虚無主義 / 天皇制批判 / 自伝 / シュティルナー / アルツィバーセフ / ルソー |
研究成果の概要 |
金子文子の自伝『何が私をこうさせたか』を表現に即して丹念に読むことで、裁判のための尋問調書等では知ることのできなかった、性に弱く虚栄心に左右される人間・金子文子を明らかにした。そして、そこに「運命」からの脱却という物語を読んだ。また、当時の山村や朝鮮、東京の状況を明らかにし、金子文子の思想が誕生する必然性を示した。そして、自伝形式と「自然」の治癒力にはルソー、「自我」思想にはシュティルナー、獄中自死の選択にはアルツィバーセフ、短歌制作には石川啄木の影響を認め、それらを検証した。更に、金子文子死後の受容について瀬戸内晴美とキム・ビョラ、映画『朴烈』を取り上げ、金子文子の現代的意味を考察した。
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自由記述の分野 |
日本近代文学、日露比較文学、日露交流史
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
従来、金子文子は大逆事件を志した大正期の虚無思想の運動家として、または男女関係に拘泥されない朴烈との対等なパートナーシップに注目した女性史の観点からの評価が主であった。しかし、本研究では、自伝を裁判調書と比較し、虚構部分を明らかにし、文学として読むことでその物語性を浮き彫りにした。それによって硬質な思想家とは異なる新たな金子文子像を読み取った。また、時代背景を明らかにし、金子文子の思想の必然性を明らかにした。更に、海外からの哲学思想の影響を具体的に検証し、その国際性も明らかにした。金子文子の死後の受容研究も含め、先行研究にはない詳細、かつ多面的な金子文子像を提示した点に本研究の意義がある。
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