研究課題/領域番号 |
19K00534
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
秋草 俊一郎 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 准教授 (70734896)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 冷戦 / 翻訳 / 世界文学 / ポリシステム / アメリカ文学 / ソヴィエト文学 / 日本文学 / 比較文学 |
研究実績の概要 |
本年度は主にソヴィエトにおける「世界文学」の創出とその権威づけ、流通のプロセスについて研究をおこなった。6月に、冷戦が文学にあたえた影響について、The Japan Council of Russian and East European Studiesで発表“Cultural Diplomacy through Literature: Soviet Literature in 1960s Japan”をおこなった。11月に、日本比較文学会東北支部大会で発表「ソヴィエトと「世界文学」――翻訳と民族語創作の奨励をめぐって」をおこない、ソヴィエトでいかに民族語文学が創出され「世界文学」として認知されていったのかを論じた。 同時に、翻訳研究の観点から文学の流通・普及についての分析をおこなった。その途中経過の一部を、戦後日本におけるアメリカ文学受容の一ケースとして論文「日本人はナボコフをどう読んできたか――『ロリータ』を中心に」を『言語文化』に発表した。 また現代において旧植民地やマイノリティの文学をふくむかたちでどう「世界文学」を実践するのかという疑問にたいするひとつの回答として、共編著『世界文学アンソロジー――いまからはじめる』を刊行した。 当該の研究テーマについての文献を購入し、内容を検討した。図書館にくわえ出版社の資料室を訪問し、出版資料を閲覧した。日本比較文学会、日本通訳翻訳学会、日本ナボコフ協会ほか、学会に参加して、専門家と情報交換をおこなった。またアメリカの大学関係者、出版社へのインタヴューをおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソヴィエトの「世界文学」創出のプロセスについて、自分なりの仮説をたて、理解がすすんだことで、研究が大幅に進展した。また、アメリカの学部教育における「世界文学」プログラムについても大学・出版関係者へのインタヴューを通じて深まった。さらに日本の出版社の資料室への訪問調査もある程度おこなえたことで、「世界文学全集」ブーム当時の日本の出版物をとりまく状況についても把握することができた。またそのほかの文献集めも精力的におこなうことができた。学会・研究会などにも時間のゆるすかぎり参加して、知見を深めることができた。 そのため、今年度日米ソの「世界文学」についての単著を刊行する準備が整ったと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も日米ソの「世界文学」の翻訳・流通について、研究をすすめていく。必要な材料・データはそろいつつある。ただし、2020年4月現在、新型コロナ・ウィルスの影響によって、今年度中に海外での調査・発表がおこなえるのかどうか未知数な情勢であるため、それに頼らずに、柔軟に対応できるようにしたい。具体的な方策としては古書店からの文献購入や、海外の図書館等への文献複写の申し込み、遠隔ビデオ会議システムをもちいたインタヴュー、研究会や学会での情報交換などのような代替手段を模索していきたい。 また、4月現在、国内の学会も軒並み延期・中止になっており、国内の長距離移動もむずかしい状況である。また国内の図書館も閉館しているところが多い。もし年度後半以降状況が好転すれば、国内での学会に参加し、研究発表や情報交換をおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた書籍が一部刊行延期になったため、購入計画に遅滞が生じた。2020年度に刊行された際に、該当の書籍を購入する。
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