本研究では世界文学全集の日米ソの比較対象研究をおこなった。具体的には、日米ソで世界文学という言葉がいかに用いられ、それが正典にいかに反映されたのかを世界文学全集の具体的調査によって明らかにした。結果として、それぞれの文化圏において、世界文学が出版や教育、イデオロギーの道具として用いられ、世界文学全集もまたその手段となったことが明らかになった。日本では世界文学は主に出版産業のスローガンとして大衆にうったえかけるキャッチフレーズになったのに対し、ソ連では多民族を束ねるイデオロギー的装置となった。アメリカでは世界文学は英語による学部教育を正当化するための方便として用いられた。
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