研究課題/領域番号 |
19K00535
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研究機関 | 東京純心大学 |
研究代表者 |
大竹 聖美 東京純心大学, 現代文化学部, 教授 (60386795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 韓国児童文学 / 方定煥 / 朝鮮近代 / セクトン会 / 天道教 / オリニ |
研究実績の概要 |
ソウルのオリニ大公園にある小波・方定煥の像は1971年7月23日にセクトン会によって南山に建立されたのち、南山のオリニ会館移転に伴い、1987年5月3日オリニ大公園に移設された。セクトン会とは、方定煥が中心となって1923年3月16日に東京で発足した「少年問題研究会」である。1923年当時、方定煥は東京にいた。そして、同じく東京に留学していた朝鮮人留学生たちを集め、少年問題研究会・セクトン会を発足させた。1923年3月16日というのは、創立準備会にあたり、参加した人は方定煥のほか、姜英鎬、孫晉泰、高漢承、鄭順哲、趙俊基、秦長燮、丁炳基など8人で、その後、尹克榮、曺在鎬、崔晉淳、馬海松、鄭寅燮などが加わっていく。すべて当時東京に留学していた留学生たちである。ほぼ時期を同じくして、方定煥は朝鮮初の本格的な児童文芸誌『オリニ』を刊行した。1923年3月20日創刊である。 セクトン会は、この『オリニ』誌の同人といえ、1923年5月1日に東京で正式な創立発会式を執り行っている。この日は、韓国で現在も国民の祝日として祝われている「オリニナル(こどもの日)」の第一回式典が開催された日でもある。セクトン会は、『オリニ』誌や「オリニナル」など朝鮮の子どものための文化運動(「オリニ運動」と呼ばれる)を主導した。そうした歴史的背景を持つセクトン会が、戦後あらためて方定煥の業績を讃えて建てたのが方定煥像であり、その背後の石碑には方定煥の業績が刻まれている。 このほか、「方定煥ならびに韓国児童文学成立期関連重要事項年表」を1899年から1924年までについて整理し、これらの詳細は、大竹聖美「韓国児童文学成立期の探究と1921 年前後の方定煥の足跡─ 伝記的考察と史跡踏査を中心に」東京純心大学『現代文化学部 紀要』第25号、2021年3月に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響で韓国現地踏査、資料収集、韓国児童文学学会関係研究者との情報交換、意見交換ができなかった。併せて、韓国大邱市で開催予定だった第15回アジア児童文学大会が延期となり、本研究の成果発表としての国際学会発表もできなかった。 しかし、すでに収集済みの資料を用いた文献研究は進めることができたし、論文も発表し、国内学会のでの発表もオンラインではあったが、3本の発表ができたので、その点では活発な研究活動ができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年度より延期されていた第15回アジア児童文学大会(主催:韓国児童文学学会、大邱市)が8月にオンラインで実施される。ここで、本件研究の成果が、中国語、韓国語に翻訳されて発表されるので、広く東アジアの児童文学研究者とディスカッションできることを期待している。 コロナ渦にあっても、オンラインを活用した日韓研究セミナーを主催したり、新しい手法にチャレンジしながら、研究の進展を画策している。 文献研究、資料分析、オンライン発表と情報交換などはコロナ渦であっても可能であるが、しかし、文献を生み出すのも文章を執筆するのも人間であり、その人間が生きた土地と時代と空気を五感をフル回転させて探索してこそ生きた研究となるという信念をさらに強めている。現地踏査の悦びが研究の強いモチベーションとなっていることも現地に行けない今こそ実感している。現地踏査が可能となる日に向けた準備期間としてこのステイホーム期間を自室での研究時間に充てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、4年間の研究計画のうち、3年目に該当する。8月にはオンラインではあるが、国際大会(第15回アジア児童文学大会・韓国主催)での発表も控えており、東アジアの研究者へのプレゼンテーションとなるため、研究の発展を期待している。
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