研究課題/領域番号 |
19K00535
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研究機関 | 東京純心大学 |
研究代表者 |
大竹 聖美 東京純心大学, 現代文化学部, 教授 (60386795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 韓国児童文学 / 方定煥 / 朝鮮近代 / オリニナル / 子どもの日 / オリニ運動 / 少年運動 / 児童文化 |
研究実績の概要 |
韓国の5月の行事として定着しているオリニナル(子どもの日)は、そもそも方定煥が1921年5月1日に少年運動・児童文化運動の活動母体として結成した天道教少年会の設立一周年を記念して1922年5月1日に<オリニナルの行事>を行ったこと、さらに翌1923年5月1日に金起田が京城で「少年運動協会」を発足させ、天道教という枠組みを外して第一回オリニナルを開催したこと、さらに同日東京にて方定煥が朝鮮人留学生を集め、少年問題研究会「セクトン会」の創立発会式を行ったことを起点としている。 そのため、2022・23年は100周年を迎えたことになる。これは、少年運動100周年というだけでなく、同時に韓国児童文学100年ととらえることができる。韓国児童文学の起点は1923年3月創刊の児童文芸誌『オリニ』をもって認識されているためである。 『オリニ』を創刊した方定煥は、1919年に3・1独立運動にかかわった後、1920年9月頃東京に渡り、1921年4月9日、東洋大学専門部文化学科に入学して1年間在籍した。この間、東京では『幼児教育』の20周年記念行事として「児童保護宣伝」(1921年)が盛大に行われ、さらに翌1922年の5月には全国主要都市にて同時開催の「全国児童愛護デー」が開催されていた。 筆者は、1922年5月に方定煥が朝鮮にて初めて行った<オリニナルの行事>は、1921年11月22日に東京で行われ「子供日」と呼ばれた「児童保護宣伝」の行事がオリニナルのモデルであることを史料に基づき検証した。「子供日」を朝鮮語に直訳すると<オリニナル>となり、児童の権利、福祉、幼児教育の価値を訴える運動体である点で相違なく、それらを宣伝する大量のビラを配布し、行列を行い、講演会や口演童話会を行うなど、実施形態も類似していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症拡大による制限があり、韓国での資料収集、現地踏査、現地研究者との情報交換等が2年あまりできずにいた。しかし、2022年9月から現地調査が可能となり、研究期間を1年延長することで今回の研究目的は達成可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
世界方定煥学術大会(韓国・ソウル/方定煥研究所、淑明女子大学世界児童青少年文学研究センター主催/淑明女子大学/2023年11月9日(木)~11月12日(日))にて、近代朝鮮少年運動の開拓者である方定煥の東京留学時代に焦点を合わせた同時期日本の児童文化、特に「子どもの日」と子どもの人権運動、児童保護・児童愛護運動との比較に関する研究成果を韓国語で発表する。近代朝鮮の少年運動の特質を日本の児童保護、児童愛護運動と比較することでキーパーソンとしての方定煥が見た日本の児童文化とそれを朝鮮に持ち帰って行った朝鮮の児童文化運動を比較する。こうした研究は初めての試みである。韓国児童文学創成期のより明確な特質把握につながると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大のための行動制限により、韓国での現地踏査、資料調査、研究者との情報交換が計画通りできなかったため。
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