研究実績の概要 |
日本独文学会の欧文特集号である「多和田葉子-エキソフォニーの詩学」を募集し、春期研究会でも多和田葉子シンポジウムを企画した。9月にはベルリンとウィーン、チューリヒに出張し、Thomas Stangl, Lydia Mischkulnig, Ann Cotten, Ilma, Rakusa, Julya Rabinowich, Terezia Mora, Peter Rosei, Herbert Wimmer, Phillip Weissといった作家たちと面談し、文学における多言語性や越境性、現実と虚構の交差性などに関して興味深い知見を得た。オーストリア現代文学ゼミナール招待作家として来日するStanglとは打合せを行い、11月にゼミを開催し、本務校の大学でも朗読会を行った。その際にはAnn CottenとLina Bittnerに発表依頼した。また11月末にはクルド人ドイツ語劇作家のIbrahim Amirの講演会を行い、シリア難民問題を戯画化するドラマツルギーの意義について知見を得た。ウィーン大学の博士課程学生のBittnerとオーストリアのジャポニズムについて意見交換した。3月に予定していたベルリン出張は、コロナウィルス感染症拡大のため、残念ながら中止せざるを得なかった。文学の多言語性についてはB.Siller, S.Vlasta共編のLiterarische (Mehr)Sprachreflexionen という研究書に、Ann Cotten との対話形式で執筆した。このようにドイツ語圏の越境文学研究についてはある程度促進できた。日本の越境文学研究については、多和田葉子に関して少し進展させることができた。
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