研究課題/領域番号 |
19K00536
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
土屋 勝彦 名古屋学院大学, 国際文化学部, 教授 (90135278)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 越境作家 / アイデンティティ / 多言語性 / エクソフォニー / コスモポリタニズム / 比較文学 / 他者性 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染症が収まらないため、国内外の出張を控えたが、その代わりにオンラインでの学会や研究会、朗読会、シンポジウムなどを行った。まず2021年9月11、12日に、5名のドイツ語圏越境作家(レオポルト・フェダマイアー、アンネ・ヴェーバー、オルガ・マルティノヴァ、アン・コッテン、ゼ ントゥラン・ヴァラタラヤー)を迎えて、シンポジウム「移動するアイデンティティ」を開催した。複数の文化を背景にしながらドイツ語で創作する作家たちが、それぞれ報告と自作朗読をおこない、複数の文化にまたがる文学活動と自身のアイデンティティとの相関について議論した。このオンライン・シンポジウムは、ゲーテインスティテュート東京の後援により、日独同時通訳による両言語で放映され大きな反響を得た。12月5日には、名古屋学院大学の公開シンポジウム「流動する民族社会と「国家」との相克」において、「ドイツ語圏越境作家における言語、民族、文化をめぐって」と題して講演し議論した。さらに12月11,12日には、ロシア出身のドイツ語圏越境作家であるユリア・ラビノヴィチを招待作家として、第30回オーストリア現代文学ゼミナールをオンラインで開催した。9名の国内外の研究者による発表と作家の朗読およびインタヴューが行われ活発な議論となった。また2022年2月18日に、文藝春秋『文學界』の後援により、4名の日本語圏越境作家(アーサー・ビナード、李琴峰、多和田葉子(ベルリン)、関口涼子(パリ))を迎えて越境文学シンポジウム「移動するアイデンティティ」を行った。司会を早稲田大学の松永美穂氏と土屋が務めた。日本独文学会誌のオーストリア文学特集号(欧文号)では、越境作家のレオポルト・フェダマイアーとアン・コッテンに論文執筆の依頼を行い、2022年3月末無事刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症が収まらないため、シンポジウムや研究会などが当初計画していた形式では実現できなかった。オンラインでの催しだけでは、実りある詳細な議論や新たな知見の獲得について十分な成果を得ることが難しいように思う。また海外や国内での研究出張もほとんどできない状況だったため、直接的な面談や意見交換、また資料収集など現地で行うべき研究の進展にはやや障害があった。作家との面談や意見交換は本研究の貴重な一次資料であり不可欠である。さらに新型コロナ感染症拡大のため、大学での公務である講義や演習、また校務などにおいて例年以上の時間がとられたことも研究推進には障害となった。そのため当初の計画よりもやや研究の進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年は夏から秋および冬にかけて、4,5名のドイツ語圏越境作家たちと日本語圏越境作家たちを招待してシンポジウム「移動するアイデンティティ」(継続的主題)や朗読会、研究会などを数回開催する予定である。コロナ感染症が収まらない場合はオンラインにより開催する。ベルリンおよびウィーンへの研究出張も予定しているが、これもコロナ感染症の状況しだいである。また以上のシンポジウムなどの研究成果をもとに研究書を刊行したいと考える。とくにロシアによるウクライナ侵攻にも着目し、ウクライナやロシア出身のドイツ語圏越境作家のエッセイや作品も取り上げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症拡大のために、シンポジウムや研究会などが当初計画していたリアルな形式では実現できずオンラインとなったこと。また本来直接的な面談や意見交換、あるいは一次資料の調査と蒐集などが必要であるが、コロナ問題により、海外や国内での研究出張もほとんどできない状況だったため多くの旅費が申請できなかったことによる。
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