コロナ禍もあけたものの、研究代表者(李)自身がコロナ感染するなど、思うように動けなかった恨みが残る。しかし、研究はすすんでおり、李垠評伝の最終刊となる第4巻の原稿は着々と進んでいる。 具体的には、すでに第4巻の序章が完成し、残りは事実関係を述べながら、その時代の「空気」を再現するという仕事が残るばかりだ。これには、あと数ヶ月の時間がかかるだろうが、いずれ必ず1冊にまとめることが可能だ。また、敗戦後の日本と朝鮮を描く上で少しかかわってくる北朝鮮の文化、政治体制について、火野葦平の日記の翻刻にもつとめた。火野は1955年に、中国経由で平壌、そして板門店を訪れているのだが、朝鮮が植民地だった時代にプロレタリア作家として活躍した韓雪野(ハン・ソリャ)と深く関わり、友誼を交わしているところまであらわすことができたのは、本研究の成果の一部として評価できる。 また、阪神大洪水(1938年)や、敗戦後の日本での住宅問題などをあつかった本も出版できた。これはいままで盲点だったところで、李垠評伝で大きくとりあげることになるだろう。謎に満ちた李垠の人生を振りかえるとき、それはかなり役立つことになるだろう。その意味でも、かなり研究はすすんでいるといっていい。
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