本研究は、申請者のゲルマン語研究の蓄積をもとに、ドイツ語の特性を明らかにし、同言語の新しい構造的記述を試みたものである。その際、ゲルマン諸語を中心に70余りの現代語、方言、古語のデータを広範に援用することを通じて、伝統的な歴史言語学の成果を尊重しつつ、ゲルマン語類型論の視点をとくに重視した。こうして、従来の日本では看過されがちだった古今のゲルマン諸語全体を射程に収めたドイツ語研究の新しい可能性を示すことに成功した。その成果は、業績表に記した一連の論文に具体化され、さらに考察を加え、補筆・修正を施して刊行した『ゲルマン語歴史類型論』および『ゲルマン諸語のしくみ』という2冊の単著として結実した。
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