研究課題/領域番号 |
19K00545
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 聖子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70165330)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 語用標識(化) / 談話標識(化) / 左方周辺部・右方周辺部 / 構文化・文法化 / 条件構文 / 脱従属化 (insubordination) / 構文・用法基盤アプローチ / 間主観性・相互行為 |
研究実績の概要 |
本研究は、談話における接続・条件構文の使用を実データに基づき分析し、(1) その左方周辺部(発話頭・文頭)および 右方周辺部(発話末・文末)での用法の形式・意味・機能を明らかにすること、(2)その構文化・文法化や語彙化・脱文法化や脱従属化(insubordination)、語用標識化・談話標識化等動態諸相を浮き彫りにすること、(3)それら動態諸相の類型とメカニズムを、構文的特質、主体性・認知的過程,および、談話展開や間主観的相互行為過程等複合的観点から解明しモデル化することを目的とする。 2021年度も引き続き、談話における接続構文の使用を分析し、複文での形式・意味・機能と照らし合わせつつ、その左方周辺部および右方周辺部での用法の形式・意味・機能を明らかにする研究を進めた。 とりわけ、脱従属化(insubordination)構文と複文とその中間的構文とを包括的に捉える分析を進め、統語・形式的にも意味・機能的にも類似性とともに相違を呈する関連構文を family of constructionsと位置づけ、その構文ネットワークの諸相を明らかにしつつ 構文彙 (Construct-i-con) を構築する枠組みとモデルを提案した。これら構文彙の分析・モデル構築を国際構文理論学会(ICCG11, 2021年8月於ベルギー・アントワープ大学)において発表した。 さらに、脱従属化(insubordination)構文と複文とその中間的構文とを包括的に捉える構文彙の分析に基づき、子供の第一言語獲得におけるこれらの構文の習得の分析を進め、国際学会において成果発表を行った。さらにこの分析の論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自国・研究室内で実施可能な分析等を、当初の研究計画に基づいて進めてきており、研究成果の一部を国際学会等で発表した(ベルギーで開催の国際構文理論学会、米国ボストンで開催の言語発達学会等)。 また、国際学会における研究交流・貢献等にも遠隔通信を通して努めている。ただし、COVID感染拡大の情勢のため、研究手法は限定的になっており、代替または縮小を余儀なくされている。また、海外の研究機関の研究者との研究交流や共同研究活動も翌年度以降に延期してきている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も(COVIDによる海外渡航制限が続く場合)、まず自国・研究室内で実施可能な手法での分析を、研究計画の目的に基づいて継続する。研究計画の焦点項目の中では、右方周辺部の語用標識(化)の分析や脱従属化(insubordination)構文と複文の構文彙に関する分析に加えて、左方周辺部(発話頭・文頭)の語用標識(化)の分析にも注力する。また、それぞれの研究目的・研究問題においてこれまで焦点をあてた事例分析を軸に、それ以外の事例についても考察や分析を拡張し、モデルの検証を拡張したい。 2022年度以降も、国内外で開催される国際学会において発表する予定である。また、遠隔で可能な海外とのコラボレーション等も継続する。それら研究活動の一部として、一昨年度から欧州の研究者との連携で進めてきているHandbookの総説の執筆・改稿等も継続し完成する。さらに、 コロナ情勢が米国渡航可能になるまで改善した場合は、米国での研究コラボレーションや発表等も再開したいと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にベルギーで開催された国際学会に参加し発表したが、COVID感染拡大のため、ヨーロッパ圏外からはオンライン参加・発表になった。また、米国で開催された国際学会に参加し発表したが、米国でのCOVID感染拡大のため、オンライン開催・発表になった。そのため、国際学会出席のための海外出張旅費2件が今年度執行されず、次年度以降の複数の国際学会参加のために海外出張旅費の繰り越しとなった。さらに、予定していた米国での研究や研究会のための海外出張もCOVIDによる渡航制限のため延期になったため、次年度(以降)にコロナ情勢が改善し渡航が可能になった後に海外出張を予定している。これら調整に伴い、海外出張先で生じる用務の謝金等も次年度(以降)に必要になるため、謝金経費等も次年度(以降)に確保した。これらの諸経費が、次年度以降に必要になる。
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