研究課題/領域番号 |
19K00549
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
壇辻 正剛 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (10188469)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 声調 / 声調言語 / 音節構造 / 音響分析 / 知覚実験 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では声調言語の音節の音響的構造に関して、音響分析や知覚実験を通じて音響音声学や聴覚音声学的なアプローチを遂行すると共に、応用言語学的な知見も加味して、音節の音響的構造の分析に関する再検討を試みることを目的として研究を推進した。 ・音声収録と音声データベース化に関しては、収録した声調言語の母語話者音声のデータを整理、編集し、データベース化をはかって知覚実験に利用できるように整備を進めた。 ・知覚実験の研究では、狭義の声調言語の話者だけでなく、ピッチ・アクセントの言語の話者も対象に知覚実験を実施した。具体的には、5声調を持つタイ語の音声を知覚実験の聞き取りテストの対象として、6声調を持つベトナム語の話者、5声調を持つタイ語の話者、4声調を持つ中国語の話者、声調は持たないピッチ・アクセントの日本語の話者を被験者にして、声調聞き取りの知覚実験を実施した。その結果、当初の予想とは異なり、声調を最も多く持つベトナム語の話者の正答率が予想外に低く、声調を持たない日本語の話者の正答率もそれ程低くないという結果になった。そこで、知覚実験の結果を精査検討し、知覚テストに用いたソフトウェアを改善すると共に、被験者の出身地や方言等についても再検討を施した。 ・基本周波数(F0)・音長・音量の分析では、知覚実験の結果を参照しながら、基本周波数(F0、ピッチ)や音長(duration)・音量(強さ、intensity)の音響分析を施し、動態変化や相互作用、代償作用、階層性(hierarchy)、基本周波数の倍音の構造等の諸側面から検討を行った。その結果、今回の知覚テストで被験者の判断に影響を与えている最も大きな要因は基本周波数の高低そのものではなく、時間軸上での動態変化の様相ではないかとの示唆が得られた。今後、さらに精査し、声調の知覚要因の解明に繋げたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた知覚実験や音響分析はある程度の段階まで実施できた。その後、新型コロナウイル禍の影響もあり、声調言語話者の新たな被験者の調査は延期しているが、2019年末までの前半の段階では当初予定していた進捗速度よりも早く進めることができていたこともあり、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイル禍の影響もあり、研究発表や新たな知覚実験や録音などは延期せざるを得なかったが、その分、音声データや実施済みの知覚実験の結果を精査し、音節構造の分析を進める推進方策をとる。また、現在までの段階でも興味ある研究結果が出ているので、研究成果に関する執筆を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイル禍の影響もあり、当初予定していた追加実験や調査旅費、資料収集旅費等を次年度以降に延期したことなどによる。情勢の推移を見て、今後、追加実験や資料収集、調査等を実施する予定である。
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