研究課題/領域番号 |
19K00550
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バントゥ諸語 / 主語 / 主題性 / 国際共同研究 / マイクロバリエーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アフリカ大陸赤道以南に広く分布するバントゥ諸語の主語のプロパティを比較し、類型化をすることである。2020年度は、①学会等での成果発表、②海外共同研究者との打ち合わせおよび論文執筆、③データの見直し、を行った。 ①については、5月に日本アフリカ学会で「バントゥ諸語のマイクロバリエーションとは」と題して、9月に研究会で「バントゥ諸語の「主語」の主題性に関するマイクロバリエーション」と題して、それぞれ本研究の現在までの成果を発表した。また2021年2月にはスワヒリ語のexclusive particleについての発表を行った。これは「主語」をテーマにするものではないが、文の構成要素の「主題性」との関係という視点から本研究の成果を反映させた。 ②については、海外研究協力者の森本雪子氏(ベルリン在住)とオンラインで定期的に打ち合わせを行って論文執筆を進めた。2020年度は3本の論文に取り組んだ。そのうちの1本であるバントゥ諸語の情報構造に関する共著論文を2020年3月に提出した。これは近くOxford University Pressから出版される論文集に掲載される。他2本は9月に発表した内容に関係するもので、日本語と英語で共著論文を執筆中である。Lutz Marten氏(ロンドン大学)とHannah Gibson氏(エセックス大学)ともデータに関する情報交換および本課題の今後の展開についての相談をオンラインで2度にわたって行った。11月から1か月Gibson氏を大阪大学に招聘する予定であったが、これは残念ながら中止となった。 ③については、2020年度はウガンダとルワンダで新たなデータの収集を計画していたが、現地調査を行うことができなかったため、これまで収集したデータの整理と見直しを行い、補完すべきデータの確認、文献や論文の例文からのデータピックアップを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、①海外共同研究者との研究打ち合わせ、②ウガンダとルワンダでのデータ収集、③国際学会での成果発表を計画していた。 ①については、いずれもオンラインでの実施となった。打ち合わせ自体はオンラインで行うことができた。ただしGibson氏と共同執筆する予定であったコピュラ文および存在文における主語のプロパティに関する論文は、Gibson氏の来日が中止になったこと、双方ともにオンライン授業の準備等で十分な時間が取れなかったことなどによって実現できず、2021年度に持ち越されることになった。 ②については、2020年度はアフリカでの現地調査を行うことができなかったため、ウガンダとルワンダでのデータ収集はできなかった。2020年度後半には現地に行ける状況になるかもしれないという思いがあり、オンライン調査や国内での調査を思いつくのが遅れてしまった。そのため、2020年度に収集できたのは文献からピックアップしたデータだけで、新しいデータはほとんど集めることができなかった。 ③については、2020年度に予定されていた国際学会が延期になったため、成果発表は国内の学会、シンポジウム、研究会だけになってしまった。 2019年度の終わりに想定外の事態になったことで予定していた成果発表や調査ができなくなってしまったが、2020年度はさらに計画通りにプロジェクトを進めることができなかった。計画よりも特に遅れてしまったのは新たなデータの収集である。予定している調査地の状況によって現地調査が計画通りにできない可能性があることは考慮していたが(その場合は行き先を変更したり国内に話者がいる言語のデータを収集する等の対策を考えていた)、海外渡航だけでなく国内の移動も自由にできないという場合は想定していなかった。まったく移動ができなくなった場合に対する準備ができていなかったことは大いなる反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の計画では2021年度が最終年度となっていたが、2020年度に計画通りにデータの収集できなかったことから、本課題の研究期間を1年延長する予定である。その上で、2021年度は、①海外共同研究者たちとの研究打ち合わせ、②コンゴ、ウガンダ、ルワンダの言語のデータ収集、③学会等での成果発表、を行う予定である。 ①については、2020年度に続きオンラインで行う。具体的には、現在進行中の森本氏との2本の共著論文の執筆、2022年度にマラウィ大学で開催予定の国際バントゥ諸語学会での共同発表およびその応募アブストラクト作成の打ち合わせを行う。 ②については、申請書に書いた内容と異なってくるが、関西在住のバントゥ諸語話者に協力してもらい、新型コロナ感染拡大防止に留意しながら調査を行う。現在コンゴ語話者とラリ語話者(コンゴ)、ガンダ語話者(ウガンダ)に内諾を得ている。またルワンダ在住の邦人に協力してもらい、オンラインでデータ収集に協力してもらえるルワンダ語の母語話者を探す。また数は限られているが、2020年度と同様に可能な限り文献調査を進める。もし2021年度中に海外渡航が可能になれば、ルワンダとウガンダで現地調査を行う。 ③については、6月にThe 8th International Conference on Bantu Languages(エセックス大学、英国)と10th World Congress of African Linguistics(ライデン大学、オランダ)がオンラインで開催される。これらの学会で本研究の成果を発表する(アブストラクトは採択済み)。また現在執筆中の2本の論文を仕上げ、国際ジャーナルに投稿する。 2020年度に続き、2021年度もさまざまな点で未確定の部分が多いが、柔軟に対応しつつ、データ収集のために最大限の努力をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、海外出張も国内出張も行うことができなかったため、予定していた①ヨーロッパで開催される国際学会での発表のための2回分の海外旅費、②ウガンダとルワンダでの現地調査のための海外旅費、③東京と大阪で予定していた研究会の旅費、が未使用となった。旅費については2021年度も未確定な部分が多いが、国内の移動が可能になれば、国内調査の旅費および東京での研究会とワークショップの開催のために使用する。もし今年度内にルワンダとウガンダでの現地調査が可能な状況になれば、海外旅費に用いる。
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