言語の多様性のありさまと変化のプロセスについて分析追求するために、多様な言語データを地図化し、関連する方言分布を総合・比較する研究を実践した。
①新潟県の形容詞の特殊形式に注目し、様々な方言辞典や言語地図に基づき地図化や地域による集計を行った。形容詞の発音の型として促音型・長音型・普通型・撥音型・佐渡型があり、地域差があることがわかったが、アーケ(赤い)のような長音型の分布は資料により異なり必ずしも一定しない。一方、アーケナル(赤くなる)のような活用形における長音型は中越から上越にかけて重なって分布する。強調形としての長音型と活用形における長音型を区別する必要があることがわかった。 ②東京外国語大学アジア・アフリカ研究所の共同利用・共同研究課題「アジア地理学研究」に関連して、アジアや日本における「太陽」の分布について発表した。同じく「アジア・アフリカ地理言語学研究」に関連して、Linguistic Atlas of Asia and Africa (LAAA)の作成にあたりコーディネーターを務めることになったキョウダイ名の体系について、日本語(日琉諸語)の分析を行うとともに、アジア・アフリカ全域の分布の分析も進めた。類型論的な項目について広域の分布の解釈が可能なことを示した。 ③民俗分野における名称と指示物の関係に注目し、裂き織りの名称と指示物について、方言辞典や民俗資料を基に様々な地図化を試行し分布の解釈に努めた。典型的な裂き織り以外の、麻や藤などの従来型の素材を用いた織物も裂き織りと呼ばれていることから、それも含めて地図化し、分布からその変化をたどることができた。裂き織りに関連する刺し子の名称と指示物についても地図化し、同様の分析を行った。
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