研究課題/領域番号 |
19K00557
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
中村 浩一郎 名桜大学, 国際学部, 教授 (50279064)
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研究分担者 |
山城 智史 名桜大学, 公私立大学の部局等, 上級准教授 (50794616)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 主題構造の通言語的比対照 / カートグラフィー分析 / 日本語学習者 / 理論と実践の融合 |
研究実績の概要 |
交付決定時の研究内容によると、2020年度の研究計画は(i)日本語・中国語とヨーロッパ言語の主題階層について、カートグラフィー理論的研究を行う(ii)国内外の学会において研究発表を行う(iii)中国における日本語学習者のデータ収集を行うであった。 (i) に関しては、日本語、中国語、イタリア語、スペイン語、英語などの比較対照研究を通して、普遍的な主題構造を提案することに一層近づいた。また、(ii)に関してはFamiliar topic, frame-setter, contrastive topicと呼ばれる主題句の生起順がドイツ語、イタリア語では決まっているというという分析がなされており、これが中国語にも当てはまると言う趣旨の分析がなされ始めている。これに対する、日本語から提示する分析を通しての反論としての論文を、2020年9月に実施される50th Poznan Linguistic MeetingにおけるワークショップWord Order Mattersで発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大のため2021年に延期となった。また、(iii)に関しては、分担者が中心となって行う中国天津市南開大学における日本語学習者に対するインタビュー調査は、年度中に予定していたものの、新型コロナウイルス感染症拡大により渡航が不可能となり、行うことができなかった。 代表者の"Another argument for the differences among wa-marked phrases"はJohn Benjaminsから2021年9月発行予定の Fuzhen Si and Luigi Rizzi. eds., Current Issues in Syntactic Cartography: A Cross-linguistic Perspectiveに掲載される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者は論文執筆を行った。"Another argument for the differences among wa-marked phrases"はJohn Benjamins社から2021年9月発行予定のFuzhen, Si and Luigi Rizzi. eds., Current Issues in Syntactic Cartography: A Cross-linguistic Perspective.に掲載が決定している。また、中国語の主題-焦点構造の分析を出発点として、カートグラフィーと情報構造(Information Structure, IS)のインターフェイスを概説した「カートグラフィーと情報構造(IS)のインターフェイス」も2021年秋開拓社から発行される『言語のインターフェイスシリーズ第1巻 統語論からのインターフェイス』に掲載される。これらを通して、中国語、イタリア語などのデータはある程度収集できたものの、日本語と中国語の比較対照研究に関する理論と実践の融合を目指す本研究の核となる、中国人日本語学習者のデータ収集できなかったことから、(3)とした。新型コロナウイルス感染症拡大により仕方ないことではあるが、本研究を進めるに当たり大きな誤算となった。分担者は日本人中国語学習者のデータに関して、学内で行っている中国語Ⅰ、中国語Ⅱ、外国語特別講義(中国語Ⅲ相当レベル)、観光実用中国語のクラスにおいてGoogleコンテンツを活用したICT教育を実施した。初級レベルから中級レベル学習者の中国語に対する「構造イメージ」を構築することで、日本語と中国語の構造上の相違点を学習者の観点から可視化することを進めている。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたため、中国国内にいる日本人留学生に対するデータ収集が実施できず、限定的ではあるが国内でのデータ収集となった。
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今後の研究の推進方策 |
Familiar topic, frame-setter, contrastive topicと呼ばれる主題句の生起順がドイツ語、イタリア語では厳格に決まっている、という分析イタリア、ドイツなどの研究者によってなされており、しかもそれが中国語にも当てはまると言う趣旨の分析がなされ始めている。これに対する反論を日本語のデータ分析を通して提示する研究発表を2021年9 月16 日から19日にかけてポーランドで対面で、あるいはオンライン上で開催される50th Poznan Linguistic MeetingのワークショップWord Order Mattersで行う。更に、トピックとフォーカス要素を、今一度意味論的に分析し、結果的にカートグラフィ-を使って扱うという趣旨の論文を2021年秋にオンラインで開催される4th International Workshop on Syntactic Cartographyに投稿する。更に、南開大学での対面でのインタビュー調査によるデータ収集を含む資料収集も、実施予定である。現在、南開大学の協力者とはオンライン会議を利用し、次年度の予定を調整中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年9月開催予定の50th Poznan Linguistic Meetingが、新型コロナウィルス感染症加工大のため2021年に延期になった。本年度は同学会を対面で開催されれば渡航旅費を使用する。更に、南開大学での資料収集も新型コロナウイルスにより不可能となった。今年度可能であれば、現地に赴きデータを収集する。南開大学の協力者には、中国におけるカートグラフィー研究の観点から日本語教育に関する最新の研究成果の共有を依頼する。また、国内の研究者に協力を依頼し、日本語のデータを収集する予定であったが、状況により、オンラインでのデータ提供を依頼する可能性もある。更に、最新の研究成果が発表されている文献、論文などはインターネットを通して購入する。
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