研究課題/領域番号 |
19K00557
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
中村 浩一郎 名桜大学, 国際学部, 教授 (50279064)
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研究分担者 |
山城 智史 名桜大学, 公私立大学の部局等, 上級准教授 (50794616)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 主題構造の通言語的比対照 / カートグラフィー分析 / 日本語学習者 / 理論と実践の融合 |
研究実績の概要 |
代表者は国際学会発表を2回、図書1冊を出版した。1件目は 2021年9月16日開催50th PLM Workshop “Word Order Matters” における“Arguments against the rigid word order and occurrence restrictions among topic elements: evidence from Japanese”である。主題要素の生起順がイタリア語、ドイツ語、さらには中国語で制限されている事実に対し、日本語から反論を提示した。2件目は2021年10月30日に開催された4th IWSC における“Focus Constructions in Japanese and Chinese-From Semantic-pragmatic perspective to Cartography Investigation”である。ここでも、日本語と中国語の焦点・主題構造をイタリア語などのヨーロッパ言語と比較した。更に、2021年11月開拓社刊行の『統語論と言語学諸分野とのインターフェイス』を編集し、第5章「カートグラフィーと情報構造とのインターフェイス」を執筆した。この章では、日本語・中国語とイタリア語、ハンガリー語を研究対象に、カートグラフィー研究と情報構造研究の歴史から発展の経緯を分析し、最新の研究成果を紹介した。また、前年度執筆の“Another argument for the differences among wa-marked phrases"は2021年9月発行のFuzhen, Si and Luigi Rizzi. eds., Current Issues in Syntactic Cartography: A Cross-linguistic Perspectiveに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者は学会発表、図書出版を通して中国語、イタリア語、スペイン語などのデータを収集することができ、より普遍的な主題構造構築に近づいた。しかし、日本語と中国語の比較対照研究に関する、理論と実践の融合を目指す本研究の核となる、中国人日本語学習者のデータ収集できなかったことから、(3)とした。分担者は学内での中国語クラスにおける文法理解に関するデータ収集を進めながら、海外向けには中国人日本語学習者のデータ収集を予定している南開大学外国語学院日本語学科の学生とオンラインでの交流の場を設けた(計3回)。新型コロナウイルス感染症拡大による不可抗力であり、致し方ないことではあるが、本研究を進めるに当たって大きな誤算となった。
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今後の研究の推進方策 |
Familiar topic, frame-setter, contrastive topicと呼ばれる主題句の生起順がドイツ語、イタリア語では厳格に決まっている、という分析イタリア、ドイツなどの研究者によってなされており、しかもそれが中国語にも当てはまると言う趣旨の分析がなされ始めている。これに対する反論を日本語のデータ分析を通して提示する研究発表を2021年度に行ったが、更に扱う言語を広げ、主題構造について普遍的な理論を構築する。また、2022年度10月に開催予定の日本英文学会九州支部大会におけるシンポジウム開催が決まっている。そこでは、統語論と言語学諸分野とのインターフェイスを扱う。このシンポジウムにおいても、主題構造の普遍性と個別性を議論する。さらに、沖縄外国文学会の機関誌Southern Reviewに代表者・分担者共著で、「構造理解に基づく中国語教育」をテーマとする論文を投稿する。更に、南開大学での対面でのインタビュー調査によるデータ収集を含む資料収集も、実施予定である。現在、南開大学の協力者とはオンライン会議を利用し、次年度の予定を調整中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年3月に予定していた南開大学での資料収集が新型コロナウイルスにより不可能となった。今年度可能であれば、現地に赴きデータを収集する。南開大学の協力者には、中国におけるカートグラフィー研究の観点から日本語教育に関する最新の研究成果の共有を依頼する。更に、北京語言大学のFuzhen Si氏にも中国語データ収集の協力を依頼する。また、神戸大学の岸本秀樹氏、神田外語大学の遠藤喜雄氏に協力を依頼し、日本語のデータを収集する予定であったが、状況により、オンラインでのデータ提供を依頼する可能性もある。更に、最新の研究成果が発表されている文献、論文などはインターネットを通して購入する。
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