研究課題/領域番号 |
19K00558
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐野 真一郎 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (30609615)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 最小対 / ミニマルペア / 対立 / 母音 / VOT / アクセント / 持続時間 / コーパス |
研究実績の概要 |
本研究では,最小対(ミニマルペア)に特徴付けられるような音韻的対立・語彙的な区別に注目し,これらが対象となる言語要素の実現の仕方や分布の仕方にどのような影響を与えるのか,そこにはどのようなパターンがあるのかということを明らかにすべく,計画を実施している。先行研究,及び申請者のこれまでの研究成果を踏まえ,本研究では大規模コーパスの実際の発話データを使って大量の発話データを調べることで,日本語における1. 母音・子音の長さの対立,2. アクセントの対立,3. 有声・無声の対立に注目し,対立を担う(最小対を持つ)場合とそうでない場合で,実際の発話での実現形・分布に違いがあるかを調べている。 本年度(令和元年度)は,「子音の長さの対立」を発展させ,「有声・無声の対立」,及びこれらの関係について調査・分析した。具体的には,対立を担う(最小対を持つ)場合とそうでない場合で,対象となる要素(弁別素性)の発音特徴(閉鎖持続時間,有声開始時間)がどのように実現・分布するかについて検討した。結果は以下の通りである。 1. 弁別素性の強調発音・パターン:最小対,対立・区別の影響として,対立を担う場合,弁別素性の発音特徴に違いが確認された(単音は短く・促音は長くなる,有声音は短く・無声音は長くなる)。 2. 分節音の特徴による違い:対象となる要素(音)の調音法,調音位置,有声性などの特徴の,弁別的強調発音への影響が確認された。 3. 韻律・その他の特徴の影響:長さに加えて,アクセント,品詞,語種の違いが区別の手掛かりになる場合,また発話速度,語彙頻度に違いがある場合の弁別的強調発音に対する影響が確認された。 4. 通言語的・通時的な比較・検討:弁別的強調発音の全体的な特徴は,英語のそれと共通するが,同時に細かい点については相違点も観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度末に,新型コロナウィルス感染症流行により,研究発表の中止や,調査・分析ができないといった事態が発生したが,当初研究計画で想定していた調査項目の多くについて調査を行い,知見を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度(令和2年度)は,「有声開始時間(VOT)」に関する分析を進展させ,「母音」に関する調査・分析に移行する。また,その過程で更なる進展が見られた場合,新たな項目を追加し,調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症流行により,参加予定であった学会が中止となり,旅費の執行ができなかったため。繰越額は,代替の学会への参加費・旅費に充てる予定である。
|