• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

削除現象と作用域解釈から見えるインターフェイス条件の性質

研究課題

研究課題/領域番号 19K00560
研究機関清泉女子大学

研究代表者

佐藤 陽介  清泉女子大学, 文学部, 准教授 (90835654)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード項省略 / 動詞残置型省略 / 焦点ミスマッチ現象 / 極性反転現象 / 使役達成動詞 / 動詞の下位事象と語彙分解 / インターフェイス条件 / アジア言語
研究実績の概要

研究代表者は、自然言語の省略現象と作用域解釈を足掛かりに、意味と音声の関係に係るインターフェイス条件の性質を考察した。その中でも、①日本語の熟語と項省略の相関関係、②日本語の「だけ」などが付加した項省略に課せられる制約とその分析、③日英語の否定繰り上げ述語を含む間接疑問縮約に観察される極性反転現象、④インドネシア語における使役達成動詞に体系的にみられる「非達成読み」、を集中的に研究した。いずれの研究においても、新たな興味深いデータの発掘そして生成文法における理論的示唆を持つ研究結果を得ることができた。①では、日本語の熟語形成の合成性が項省略の可否を左右することから、項省略という操作は意味部門で当該の発音されていない部分を補うコピー操作であるという重要な証拠が得られた。省略現象について削除かコピーかというディベートが継続している中、この発見は重要な理論的貢献を成す。②では、日本語には主語や目的語だけを省略する操作だけではなく、それらを含んだより大きな構成素 (動詞句または節全体)を省略する操作が存在することを「だけ」などを含む項の省略に課される制約から例証した。この結果は、日本語の項省略現象の派生には複数の方法が構文に応じて存在することを示している。③では、先行節と後続節の極性が変化するタイプの間接疑問縮約構文を発見した。この極性反転が現在でも活発に議論されてるNEG Raisingを用いて説明できると主張した点で、データ分析の両面で意義ある研究といえる。最後に、④では、インドネシア語の使役達成動詞の意味構造と完了形の作用域の研究を行った。この研究は、使役達成動詞の意味構造を2つの下位事象 (活動と状態変化)に分解できること、そして完了形の作用域が動詞以下の単位に係ることを示し、これからの統語論と動詞意味論のインターフェイス研究のモデルを提示することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上記で説明した①~④のいずれの研究においても、国内外の学会・ワークショップ・研究会ですでに発表を重ねている。

①と④についてはその研究結果が国際雑誌(Journal of East Asian LinguisticsとOceanic Linguistics)に掲載済または2021年度中に掲載予定である。③については、現在の分析法と問題点をまとめた小論が開拓社の論文集に掲載が確定しており、すでにこの小論の最終版は提出済みである。この小論で取り上げられなかった代案の検討や新たな考察を加えた論文は現在国際雑誌Glossaで査読中である。最後に、②については、Journal of East Asian Linguisticsに投稿した後、現在、匿名査読者からのコメントや質問をもとに修正版を準備中である。

今後の研究の推進方策

2021年度の研究計画は以下のとおりである。まず、上記の④の研究結果を国内外の学会で幅広く公表し、匿名査読者や学会参加者からのフィードバックをもとに現在投稿中のドラフトの最終修正版をJournal of East Asian Linguisticに夏休み中に仕上げ8月終了ごろまでに再投稿することが目下の何よりの目標である。次に、それと並行して、韓国西江大学教授のMichael Barrie氏と現在進行中のウズベク語の項省略に関する基本データと分析の方向性を整理し、韓国の理論言語学の雑誌に投稿出版を目指す。最後に、2018年以来アジア言語の項省略について学会やメールで議論を重ね進行を深めてきた、ベン=グリオン大学のIdan Landau氏とともに項省略を生み出す操作の性質と言語間の多様性を考察し、この操作を可能にするパラメターとはいかなるものなのかを共同研究で明らかにする予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インドネシアジャワ島へのジャワ語・インドネシアのデータ収集、そしてシンガポールにおける口語シンガポール英語の省略現象と時空間メタファーの実験データ調査に行けなかったことにより、上記の次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Action/result in Indonesian accomplishment verbs and the agent control hypothesis2021

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato
    • 雑誌名

      Oceanic Linguistics

      巻: 60 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Syntactic Head Movement in Japanese: Evidence from Verb-Echo Answers and Negative Scope Reversal2020

    • 著者名/発表者名
      Sato Yosuke Maeda Masako
    • 雑誌名

      Linguistic Inquiry

      巻: 52 ページ: 1~18

    • DOI

      10.1162/ling_a_00380

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Idioms, argument ellipsis and LF-copy2020

    • 著者名/発表者名
      Sato Yosuke
    • 雑誌名

      Journal of East Asian Linguistics

      巻: 29 ページ: 259~278

    • DOI

      10.1007/s10831-020-09211-x

    • 査読あり
  • [学会発表] Focus mismatch under ellipsis in Japanese, polarity and head movement2020

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato
    • 学会等名
      22nd Seoul International Conference on Generative Grammar (SICOGG22)
    • 国際学会
  • [学会発表] On the degree semantics of hutsuni and zenzen2020

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato, Imai Yuka, Moka Michihata
    • 学会等名
      28th Japanese/Korean Linguistics Conference (JKL28)
    • 国際学会
  • [学会発表] Focus mismatch under argument ellipsis in Japanese2020

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato
    • 学会等名
      2020 Dongguk occasional workshop on mismatches in ellipsis
    • 国際学会
  • [学会発表] Focus mismatch under ellipsis in Japanese, polarity and head movement2020

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato
    • 学会等名
      The 95th Annual meeting of the Linguistic Society of America (LSA)
    • 国際学会
  • [図書] Japanese/Korean Linguistics 282021

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato, Yuka Imai, Moka Michihata
    • 総ページ数
      12
    • 出版者
      CSLI Publications
  • [図書] Japanese/Korean Linguistics 272020

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Sato
    • 総ページ数
      14
    • 出版者
      CSLI Publications
  • [備考]

    • URL

      https://sites.google.com/site/yosukesato112953/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi