研究課題/領域番号 |
19K00560
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 陽介 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90835654)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 省略現象 / スルーシング / 意味形式・音声形式のミスマッチ / 極性反転 / 日本語 / 英語 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究では、様々な省略現象の実証的研究を通じて、統語構造を介した意味と削除のあいだの形式的・意味的乖離が見られるケースに焦点を絞って研究を進めた。
具体的には、①英語における動詞句省略とスルーシングが統語上全く同じ先行詞を取るにもかかわらずその極性値が反転する現象の発見とその分析、②①と並行して日本語における極性反転スルーシングの発見とその理論的意義、③法助動詞の直後の削除が起こる場合 の助動詞の意味とその統語構造上の省略領域のサイズとの関係、そして④音声形式と意味形式のあいだに齟齬が観察されるケースをもとにした省略現象一般に課される意味・発音部門のmismatch理論の構築、この4点を中心的研究課題に据えて、一年間研究を行った。
研究成果としては、まず①に関して、現在この研究をまとめた小論が国際誌Linguistic Inquiryで第二ラウンドの査読中である。また同時に、2022年度に韓国で開催される国際学会でも口頭発表のため査読中である。②に関する研究成果は既にその予備的研究を開拓社より出版された記念論文集に収められているが、そこで提示して分析をさらに発展させ、Japanese/Korean Linguistics Conference 27, 慶応大学生成文法研究会、そしてGLOW 45において新たな分析を発表した。③については、既に勤務校の小野創氏や指導学生との共同研究者とアブストラクトをまとめ、2022年度に開催される日本英語学会で発表のため査読中である。最後に、④については、mismatch理論の概要とその経験的根拠を整理し、現在の理論のアウトラインをChicago Linguistic Society 58でポスター発表を行っているが、これについてもさらなる裏付けをまとめている段階であり、同じく日本英語学会第40回大会のワークショップにて発表のため査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自然言語に見られる省略現象を通じて構造を介した意味と音声の写像に課されるインターフェイス条件の性質の解明を目指すという当研究プログラム自体が、研究を着手した当初からその問題設定の性質上、新たなデータ発掘や発見のための重要な視点や手がかりを生み出すものであった。そのため、上記の『研究実績の概要』で述べたように、非常に生産的な各論研究を生み出す縁となったことが今年度の研究の生産性の理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、上記の『研究実績の概要』でまとめた①~④の研究について、国際学会での発表を重ね、参加者からのフィードバックを取り入れ、いずれの研究成果も最終的にはLinguistic InquiryやNatural Language & Linguistic Theoryなどの国際雑誌での掲載を目指す。
また、2021年度に同時進行で着手した様々な研究 (例えば、インドネシア語の部分的wh移動構文や交差コントロール構文の分析、日本語の焦点ミスマッチ構文の研究、シンガポール英語における時空間認識と中国語からの影響の認知意味論的考察など)についても、その成果を国内外の雑誌での掲載確定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた原因は、当初の研究計画で予定されていたデータ収集・分析と当地研究者との交流を目的としたインドネシアジャワ島及びシンガポールでの現地調査をコロナパンデミックのため延期したことが要因である。2022年度中、コロナ感染拡大が落ちつき次第、両国へそれぞれ2週間ほどの期間で現地調査を再開する予定である。
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