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2020 年度 実施状況報告書

未記述方言の形態統語論から見たサルデーニャ語の歴史的・類型論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00563
研究機関近畿大学

研究代表者

金澤 雄介  近畿大学, 国際学部, 講師 (70713288)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードサルデーニャ語 / 存在文 / 所有文 / 所在文 / 人称不定詞 / ロマンス諸語 / ポルトガル語 / proform
研究実績の概要

新型コロナウイルスの影響で、2020 年夏および 2021 年春に予定していた現代サルデーニャ語方言の現地調査を実施することはできなかった。したがって、当初は 3 年目に計画していた古サルデーニャ語文献を資料としたサルデーニャ語の歴史的研究を前倒しして実施した。
本年度の前半は、古サルデーニャ語における存在文の成立過程についての分析をおこなった。ロマンス諸語における存在文は、所有文における構造的な再解釈によって生じたことが先行研究ですでに指摘されている。本研究では古サルデーニャ語において、所有文から存在文への再解釈の中間段階を示す構造が観察されることを示し、先行研究の主張の妥当性を裏づけることを試みた。また、存在文を特徴づける要素であるクリティック (proform) が所有文にも観察されることを示し、所有文とも存在文とも解釈できる事例が存在することを指摘した。加えて、所在文に由来する存在文についても、両構文の中間的構造を持つ事例が観察されることを示した。
本年度の後半は、ポルトガル語と比較しつつ、サルデーニャ語における人称不定詞の成立過程について分析をおこなった。人称不定詞とは人称語尾をともなう不定詞で、不定詞の主語と一致する。古サルデーニャ語には、主語をともないながらも人称語尾は持たないという、特殊な位置づけの不定詞が観察されることを示した。サルデーニャ語では、このような不定詞が接続法半過去の形式にとって代わられた結果、人称不定詞が発生したと分析し、ポルトガル語の人称不定詞の発生よりも後の時代の変化であると指摘した。また、古サルデーニャ語には条件文の帰結節に前置詞 de によって導かれる不定詞が観察されることを示し、この不定詞は「義務」を表す用法を持つことを示した(もし A ならば、B せねばならない)。この構文は古ポルトガル語にも観察され、両言語の共通点を指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では本年度は、現地調査によってサルデーニャ語ログドーロ方言の存在文(ならびに所有文・所在文)および使役文のデータを収集する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で現地調査を中止せざるをえなくなった。そのため、現代サルデーニャ語における存在文、使役文の観察および分析がおこなえておらず、古語から現代語への変化、つまり通時的な観点からの研究が実施できていない状況である。研究に支障をきたす 1 年であったものの、古サルデーニャ語の存在文の分析、および人称不定詞の分析に一定の時間を割くことができた。今後もしばらくは、古文献を資料とした古サルデーニャ語の分析が続くと予想される。
以上に述べたように、現代サルデーニャ語方言の調査が実施できていないことから、「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

当面は、本年度おこなった古サルデーニャ語における存在文の分析と人称不定詞の分析を継続して実施する予定である。存在文については、特に南イタリア方言における存在文、所有文および所在文の通時的変化と対照させつつ、サルデーニャ語における特徴について明らかにしたい。人称不定詞については、より多くの古サルデーニャ語のデータを収集することが必要である。これまでは古ログドーロ方言のデータのみを分析対象としていたが、別の方言で書かれた古サルデーニャ語文献を対象にして、人称不定詞をより広い視点から分析することを目指す。
新型コロナウイルスが収束し、安全にイタリアに渡航できるようになれば、本年度実施できなかった現地調査をおこなう予定である。渡航が難しいようであれば、古サルデーニャ語における過去分詞の一致と助動詞の選択の相関、Differential Object Marking と部分冠詞の相関についてのデータの収集をおこないたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた現代サルデーニャ語方言調査のためのイタリア・サルデーニャ島への旅費が支出できなかった。また、参加予定であった国内・国外の学会も同様の理由でキャンセル、またはオンライン開催となり、現地への旅費の支出の必要がなくなった。以上が次年度使用額が生じた理由である。
次年度、新型コロナウイルスが収束し、安全にイタリアに渡航できるようになれば、本年度実施できなかった現地調査をおこなう予定である。渡航が難しいようであれば、本年度を通して古サルデーニャ語の文献研究をおこなった結果浮かび上がってきた研究テーマ(人称不定詞)に関する書籍の購入に使用したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] La costruzione causativa nel sardo antico2021

    • 著者名/発表者名
      Yusuke KANAZAWA
    • 雑誌名

      Actes du XXIXe Congres International de Linguistique et de Philologie Romane (Copenhague, 1-6 juillet 2019) section 4: Syntaxe

      巻: 4 ページ: 103 - 112

    • 査読あり
  • [学会発表] 古サルデーニャ語における存在文の成立について2020

    • 著者名/発表者名
      金澤 雄介
    • 学会等名
      日本ロマンス語学会第58回大会(発表資料のみの提出)
  • [備考] 古サルデーニャ語における存在文の成立について(日本ロマンス語学会第58回大会)

    • URL

      http://sjsrom.ec-net.jp/2020_kanazawa.pdf

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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