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2021 年度 実施状況報告書

未記述方言の形態統語論から見たサルデーニャ語の歴史的・類型論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00563
研究機関近畿大学

研究代表者

金澤 雄介  近畿大学, 国際学部, 講師 (70713288)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードサルデーニャ語 / 屈折不定詞 / 人称不定詞 / ログドーロ方言 / カンピダーノ方言 / 動詞形態論 / イタリア語 / ロマンス諸語
研究実績の概要

新型コロナウイルスの影響で、2021 年夏および 2022 年春に予定していた現代サルデーニャ語方言の現地調査を実施することはできなかった。したがって、昨年度に引き続いて古サルデーニャ語文献を資料としたサルデーニャ語の歴史的研究を実施した。
本年度は主に、サルデーニャ語における不定詞、特に補文節における屈折不定詞(主節の主語とは異なる明示的主語をともない、屈折語尾を持つ)と人称不定詞(明示的主語とともなうが、屈折語尾は持たない)の通時的変化についての研究をおこなった。古ログドーロ方言には、人称不定詞は観察されるが屈折不定詞はまだ観察されない。このことから、人称不定詞は屈折不定詞の語尾の省略によって生じたのではなく、屈折不定詞の出現よりも先に存在していたと主張した。屈折不定詞は、人称不定詞に対する接続法半過去からの形態的影響によってより新しい段階で発生したと主張した。一方、カンピダーノ方言では人称不定詞のみが観察され、現代においても古い段階においても屈折不定詞は存在しない。その理由として、カンピダーノ方言では接続法半過去の形態はイタリア語の影響によって別の形態(接続法大過去)にとって代わられたので、接続法半過去の形態的影響が人称不定詞に現れなかったからであると考えた。その結果、現代カンピダーノ方言において屈折不定詞は存在せず、人称不定詞のみが観察されると結論づけた。このように、人称不定詞が屈折不定詞よりも早い段階で存在していたという見方は、サルデーニャ語の 2 つの方言における屈折不定詞と人称不定詞の通時態を最も適切に説明できる。
この研究成果は 2022 年 7 月に開催される国際学会で発表をする予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2021 年当初の計画では本年度は、現地調査によってサルデーニャ語ログドーロ方言の存在文(ならびに所有文・所在文)および屈折不定詞、人称不定詞の用例のデータを収集する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で現地調査を中止せざるをえなくなった。そのため、現代サルデーニャ語における上記のトピックの分析がおこなえておらず、古語から現代語への変化、つまり通時的な観点からの研究が十分に実施できていない状況である。研究に支障をきたす 1 年であったものの、古サルデーニャ語の不定詞の分析に一定の時間を割くことができた。今後しばらくは、古文献を資料とした古サルデーニャ語の分析が続くと予想される。
以上に述べたように、現代サルデーニャ語方言の調査が実施できていないことから、「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

当面は、不定詞の分析を継続して実施する予定である。新型コロナウイルスが収束し、安全にイタリアに渡航できるようになれば、本年度実施できなかった現地調査をおこなう予定である。渡航が難しいようであれば、古サルデーニャ語における過去分詞の一致と助動詞の選択の相関、Differential Object Marking と部分冠詞の相関についてのデータの収集をおこないたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた現代サルデーニャ語方言調査のためのイタリア・サルデーニャ島への旅費が支出できなかった。また、参加予定であった国内・国外の学会も同様の理由でキャンセル、またはオンライン開催となり、現地への旅費の支出の必要がなくなった。以上が次年度使用額が生じた理由である。
2022 年度は、7 月にスペインで開催される国際学会で発表予定であるので、その旅費を支出する予定である。新型コロナウイルスが収束し、安全にイタリアで調査が実施できるようになれば、本年度実施できなかった現地調査をおこなう予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Differential Object Marking in Kinship Terms and Animacy Hierarchies in Old Sardinian2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke KANAZAWA
    • 雑誌名

      Monica Irimia and Alexandru Mardale (eds), Differential Object Marking in Romance. Amsterdam: Benjamins.

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] La costruzione causativa nel sardo antico2021

    • 著者名/発表者名
      Yusuke KANAZAWA
    • 雑誌名

      Actes du XXIXe Congres International de Linguistique et de Philologie Romane

      巻: - ページ: 455-464

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Historical Development of Existential Constructions in Old Sardinian2021

    • 著者名/発表者名
      Yusuke KANAZAWA
    • 雑誌名

      Journal of International Studies

      巻: 6 ページ: 59-72

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 古サルデーニャ語の条件文における不定詞についての試論2022

    • 著者名/発表者名
      金澤 雄介
    • 学会等名
      2021 年度ユーラシア言語研究コンソーシアム年次総会「ユーラシア言語研究 最新の報告」
  • [学会発表] Diacronia dell’infinito flesso e non-flesso nel sardo logudorese e campidanese2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke KANAZAWA
    • 学会等名
      XXX Congreso Internacional de Linguistica y Filologia Romanicas
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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