研究課題
2022 年度は主に、サルデーニャ語の 2 つの方言における屈折不定詞と非屈折不定詞の形成について通時的な観点から研究をおこなった。ログドーロ方言では、非屈折不定詞は屈折不定詞よりも古い段階から存在しており、屈折不定詞は接続法半過去からの形態的影響によって二次的に生じたことを示した。一方、カンピダーノ方言では屈折不定詞は観察されない。その理由として、イタリア語との接触によって接続法半過去の形態は接続法大過去にとって代わられた結果、接続法半過去から形態的影響が生じることがなかったことを主張した。また 2022 年度の後半は、古サルデーニャ語における「規定」の意味を持つ不定詞について、「非従属節化 (insubordination)」の観点から考察をおこなった。「規定」を意味する不定詞は、明示的な主語が不定詞の後ろに置かれることを根拠として、非屈折不定詞であると考えられることを示した。またこのような不定詞は「非従属節化」、すなわち命令を意味する動詞が含まれる主節の省略によって、本来は従属的な位置づけにあったが、主節の動詞のような機能と「規定」の意味を得たと主張した。研究期間全体を通して見ると、上記の成果に加えて、古サルデーニャ語における使役構文の構造、そして存在文の通時的変化についての研究成果を得ることができた。このように、古サルデーニャ語文献を資料とした歴史言語学的研究はある程度の進展が見られた。また、2023 年 3 月にサルデーニャ島のカリアリ大学図書館において、サルデーニャ語の形態統語論、サルデーニャ語文献学に関する資料収集を実施した。
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Differential Object Marking in Romance. Towards microvariation
巻: - ページ: 250-262
Perspectives de recherche en linguistique et philologie romanes, Actes du XXXe Congres International de Linguistique et de Philologie Romane
巻: 1 ページ: 161-170