研究課題/領域番号 |
19K00564
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長崎 郁 名古屋大学, 人文学研究科, 特任講師 (70401445)
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研究分担者 |
永山 ゆかり 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (20419211)
バトラー アラステア 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (90588873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語学 / ユカギール語 / アリュートル語 / コリヤーク語 / 古アジア諸語 / 言語接触 |
研究実績の概要 |
本研究は、北東シベリアの古アジア諸語のひとつである、コリマ・ユカギール語およびアリュートル語の様々なテキスト資料を集積し、形態論情報および統語論情報(文法関係、修飾・被修飾関係など)を付加したコーパスを構築すること、同時に、まだあまり研究の進んでいないこれらの言語に関する、より詳細な文法 記述を行うことを主たる目的とするものである。研究計画期間の3年目にあたる2021年度は、以下のような活動をおこなった。
1.コリマ・ユカギール語テキスト資料に対して、特に主節の述語を構成する要素に対する情報付与の方針を検討し、コーパスに組み込む作業をおこなった。また、昨年度に引き続き、19世紀末に収集されたテキスト集である、Jochelson(1900)所収のコリマ・ユカギール語テキストの英訳を行った。 2.1に基づき、先行研究において「迂言的過去(periphrastic past)」と呼ばれ、過去の状況を表す際に任意的に用いられるとされてきた表現についてコーパス調査をおこなった。結果として、①この表現は必ずしも過去の状況を表す際に用いられるわけではなく、「説明」「確信」「程度の甚だしさ」といった意味を伴う文、あるいは「内容疑問文」で用いられており、話し手による命題内容の捉え方に関わる機能をもつと考えられること、②しかしながら、収集年代を19世紀末と20世紀半ば以降に分けて用例を比較すると、次第に過去の状況に対する使用頻度が増加していること、③過去の状況に対する使用頻度の増加には、コリマ・ユカギール語の接触言語であるエウェン語東方言が影響を与えた可能性のあることを明らかにした。 3.既刊のアリュートル語テキスト20編にグロスと品詞情報を付した。また、過去に収集した未整理のコリヤーク語およびアリュートル語音声資料を整理・分析し、新たに露訳を付した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、今年度もテキスト資料の露訳・英訳・和訳の作成、句や節の統語範疇・統語機能に関する情報付与の方針の検討と実行、注釈付けされた情報を利用したコーパス調査に基づく言語の記述の3つの側面から研究活動を行い、成果をあげることができた。したがって、進捗状況は、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
テキスト資料の翻訳の作成、アノテーション付与を進める。可能なテキストについてはオンラインでの公開を行うものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、計画していたデータ整理作業の一部と対面による研究打ち合わせ会議が実施できなかったことが次年度使用額発生の理由である。最終年度である今年度は、必要な機材・文献の購入、謝金アルバイトへの依頼も含めたデータ整理、打ち合わせ会議の実施により経費を使用する計画である。
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