研究実績の概要 |
当該年度もCOVID-19感染拡大の影響で現地調査の実施がかなわなかった。そのため, 2021年度に引き続き, 自身らによるこれまでの調査記録の整理を行い, 先行研究を参照した他, 各種文献の精読につとめた。言語地図の作成としては, チベット・ビルマ系諸言語における, 動物語彙6項目 (‘Mouse/rat’, ‘Chicken’, ‘Horse’, ‘Wolf’, ‘Dog’, ‘Bear’) に関し, 共著論文の筆頭著者として語形の分類・地理分布・伝播に関する仮説を論文にまとめた。 また, 農耕に関わる穀物・芋類の語彙6項目 (‘Wheat’, ‘Broomcorn millet’, ‘Foxtail millet’, ‘Barnyard millet’, ‘Taro’, ‘Yam’) についても共著論文を執筆した。チベット諸語とモンゴル諸語の言語接触について地理言語学的な視点から考察した共同発表も行った (Pre-conference of ICSTLL-55, 2022年9月14日)。 音声・文法などに関しても論文の執筆を行った。牧畜文化研究の一環でチベットの食文化についても考察を進め, 論考をまとめた。また, 言語記述の一環で「アムド・チベット語における受動表現」を共著論文として発表した。また, 文献研究や言語研究のためのデータ検索を進める過程で, チベット語文学の翻訳書3冊を刊行した (『チベット女性詩集 現代チベットを代表する7人・27選』(段々社) , 『ダライ・ラマ六世恋愛詩集』(今枝由郎との共訳, 岩波書店), 『チベット幻想奇譚』(星泉, 三浦順子との共訳, 春陽堂書店))。 翻訳で得られた知見について, 『チベット幻想奇譚』の各作品における文化的・文学的背景を解題するための講演を2度にわたり行った。また、フランス国立東洋言語文化学院 (INALCO) 主催のワークショップにて, チベット現代文学の日本における翻訳状況について発表を行った。 その他, 日本におけるチベット語の言語学的研究の発展 について発表を行った (フランス国立極東学院と京都大学との共催シンポジウム)。
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