本研究は,ニジェール・コンゴ語族に属する一大言語群であるバントゥ諸語を対象として,その構造的な多様性を類型的に把握するとともに,国際共同研究によって構築したデータベースや現地調査によって得られた一次データを基盤として,それら類型間の相関関係(typological correlation)や連動関係(co-variation)についての新たな知見を提供することを目的とした. 本来の最終年度を1年繰り越した2022年度には,2021年度に実施することができなかったタンザニアにおける現地調査が可能になった.研究成果発信に関しては,本年度実施した主なものとして,6月にマラウィで開催された国際バントゥ諸語学会における口頭発表,"Postnasal trilling in Bantu: cross-linguistic variation and typological overview",またベルギー・ゲント大学との二国間交流事業による国際会議で,バントゥ諸語系統内類型論に関する2件の研究発表を行った.さらには,パラメターセットに基づくデータベースを研究資源とする系統内類型論の事例報告として,ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センターにおいて「バントゥ諸語マイクロ類型論とBantu morphosyntactic variation database」と題する発表を行った. 研究期間全体を通じた最も重要な成果のひとつは,2021年の世界アフリカ言語学会における共著発表 "A micro-parametric survey on typological covariation related to focus marking strategies: based on the Bantu Morphosyntactic Variation database" であるが,この発表論文が2023年発行のLinguistique et Langue Africaines 9(1)に掲載されることが決まっている.
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