研究課題/領域番号 |
19K00570
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
永井 崇弘 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (80313724)
|
研究分担者 |
塩山 正純 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10329592)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | プロテスタント系漢訳聖書 / ラサール訳(1807) / マーシュマン・ラサール訳(1810、1822) |
研究実績の概要 |
2021年度の本課題に関連する研究業績は、論文2篇(研究代表者;関於拉沙漢訳《嘉音遵口罵口挑菩薩之語》“的”與“了”的用法,単著,2022年1月,福井大学教育・人文社会系部門紀要第6号,1-10頁、研究分担者:明清時期西洋人“官話”描述演変史,単著,2021年6月,北京外国語大学《国際漢学》第27期,外語教学与研究出版社,145-154頁)と学会発表2回(研究分担者:(1)The words of time in Chinese Bible 漢訳聖経中的時間表現,単独,2021年8月25日 EACS2021 23rd Biennial Conference of the European Association for Chinese Studies, August 24-28, 2021 Leipzig, Germany,オンライン、(2)従倪維思夫人的著作窺看19世紀中葉在華欧美女学者的“官話”観,単独,2021年11月6日,“国際化視野下的漢語全球教育史”国際学術研討会第12届年会世界漢語教育史研究学会(河北大学),オンライン)である。特に2019年の渡英調査で発見した1807年のラサール訳『嘉音遵口罵口挑菩薩之語』の研究成果として、論文「関於拉沙漢訳《嘉音遵口罵口挑菩薩之語》“的”與“了”的用法」では、2019年度の底本と翻訳者についての考察と2020年度の訳語についての考察をふまえ、文法的考察を行った。ここでは口語の標識となりうる「的」と「了」の『嘉音遵口罵口挑菩薩之語』における用法を分析、考察し、全体的に文語的な漢訳文に口語的要素の混在を確認するとともに、それが広東語に由来することが解明された。またこの現象は1810年のマーシュマン・ラサール訳では消え、1822年の『聖経』では方言語彙ではなく、白話語彙として「的」と「了」の混入であることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の柱となっている非中国語圏で漢訳された最早期のプロテスタント系漢訳聖書の底本、翻訳者、翻訳背景、語彙、文法というそれぞれの領域における分析・考察が行われている。また2019年度の英国調査で新たに発見された1807年のラサール訳『嘉音遵口罵口挑菩薩之語』の分析・考察を中心としつつも、1810年のラサール訳と1822年のマーシュマン・ラサール訳(『聖経』)、1822年の聖経の訳文に大きな影響を与えた1823年のモリソン訳(『神天聖書』)の訳語・訳文との比較考察が行われており、総合的に非中国語圏のインドで漢訳された最早期のプロテスタント系漢訳聖書であるラサール訳とマーシュマン・ラサール訳の分析・考察が行われていると言える。これらに、その他のプロテスタント系漢訳聖書等に関する研究成果もあわせて、著書や論文、学会発表という形で広く社会に還元できている。これらの研究成果は、コロナ禍で2019年度以降の海外実地調査が実施できていないマイナス面を除いても、おおむね順調に進展していると判断することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究期間は2021年度が最終年となっているが、2019年度を最後に新型コロナ・ウィルスの世界的蔓延により、その後の海外実地調査が実施できていない。これにより当初の調査、分析・考察の項目が前後したり、変更したりする必要も生じたが、変更後の分析・考察事項はいずれも本課題の解明に不可欠なものであり、新たな知見を得ることができ、本研究課題の柱となる研究成果、知見はおおむね得られている。しかし、本課題における海外実地調査は当初計画からの柱でもあるため、研究期間を延長してでも実施したいと考えている。 今後の研究の推進方策の具体としては、所属機関における海外出張が可能となるのを待ちつつ、海外実地調査先の最新情報を集めるなどして、海外実地調査の準備を整える一方、非中国語圏のインドで漢訳された最早期のプロテスタント系漢訳聖書であるラサール訳とマーシュマン・ラサール訳の翻訳者や翻訳背景、訳語、訳文の文法的分析・考察をさらに多角度から行い、より立体的かつ鮮明にラサール訳とマーシュマン・ラサール訳における訳語、訳文の実像を示したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた国内および海外への訪問調査が新型コロナ・ウィルスの世界的蔓延のため実施できず延期したことと、研究代表者と研究分担者との打ち合わせについても、コロナ禍でおおよそ実際の訪問での実施がままならず、主としてオンラインで行ったために、旅費相当分の支出が少額となった。
|