本研究は、日本語と他言語の間におけるフィクションの翻訳の技法について、個別の作品の分析を通じて一般化を試みることを目標として、主として村上春樹の長編小説作品を取り上げた。具体的には、村上作品に現れる方言、特定語彙、特定の登場人物の話し方とその英語訳・中国語訳の実態等について調査した。 また研究の基盤となる「キャラクター」の理論的考察についても考察を進めた。結論として、《キャラクター》を人物の属性全般とし、その一部の言語的特徴として役割語・キャラクター言語が位置付けられること、属性である《キャラクター》と、唯一性を担う《人格》が一体となってインディビジュアルを形成することなどを提案した。
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