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2019 年度 実施状況報告書

言語文化に起因する価値観とフェイスが表出する「舌打ち」と「笑い」の実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00580
研究機関山梨県立大学

研究代表者

萩原 孝恵  山梨県立大学, 国際政策学部, 教授 (90749053)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードタイ人 / 舌打ち / 非言語行動 / 発話 / 映像データ / ベトナム人日本語学習者 / 日本語母語話者 / フィラー
研究実績の概要

本研究の目的は、非言語行動としてタブー視される「舌打ち」と、特におかしくもないところで笑う不可解な「笑い」を、①意味・機能、②価値観、③フェイスという3つの観点から明らかにしようとするものである。初年度にあたる2019年度は、次の2つの課題に取り組んだ。
1.映像データを調査対象としたタイ人の舌打ちのマルチモーダル分析
タイ人の発話にみられる〈舌打ち〉という非言語行動が、言語行動である〈発話〉と、どのように共起しているのかについて、映像データを通してマルチモーダルの観点から分析した。本研究におけるマルチモーダルの観点は、高梨(2016)を援用し、時間軸に基づく発話の流れの中で観察される舌打ちと、舌打ちと共起する非言語行動(ジェスチャー、視線、表情)とを統合的に捉えたものである。データは、3種類の映像データを使用し、タイ人の舌打ちによって表出されるコミュニケーションを、マルチモーダルな観点から記述した。本研究成果は、原著論文として発表した。
2.コーパスを調査対象としたベトナム人日本語学習者と日本語母語話者のフィラー調査
これまでの研究結果から、舌打ちや笑いの直前・直後にはフィラーが共起することがわかっている。そこで、ベトナム人日本語学習者の発話に伴うコミュニケーション行動の傾向を把握するために、コーパスを利用して、フィラーの使用傾向を調べた。データは、「多言語母語の日本語学習者横断コーパス International Corpus of Japanese as a Second Language」(I-JAS)で、6種類の発話タスクを対象として、ベトナム人日本語学習者50名と日本語母語話者50名のフィラーの使用傾向と使用パターンを検討した。分析では、定延(2005)と松田(2016)を視座とし考察した。本調査結果は、ベトナム・タンロン大学で開催された国際研究集会で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究計画に基づき進められたことと、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により実施できなかったことがあった。そのため、総合的に判断して(3)と評価した。2019年度の進捗状況は次の通りである。
[研究計画に基づき進められたこと]
1.映像をデータとした舌打ち研究については、計画通りに進めることができた。特に映像データで観察される舌打ちについては、高梨(2016:62)の「インタラクションにおける連鎖的関係と統合的関係」という捉え方を援用し、横軸(時間)と縦軸(モダリティ)という2つの文脈の中で、舌打ちがどのように共起し、どのような意味で使用されているのかを記述する方法を確立した。また、マルチモーダル分析を行ったことにより、舌打ちのモダリティ性について具体的に解明することができたと考えている。この研究成果は、原著論文として発表した。
2.ベトナム人日本語学習者のコミュニケーション行動に関する基礎調査を実施した。「I-JAS」というコーパスを利用し、6種類の発話タスクを調査対象として、フィラーの使用傾向と使用パターンを分析した。この調査研究は、ベトナム人日本語学習者を対象としたものであるため、現地での発表を目指し、ベトナム・タンロン大学で開催された国際研究集会で発表した。
[実施できなかったこと]
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年3月に予定していた現地調査を中止した。当該調査については、新型コロナウイルス感染症収束後に、改めて実施したい。

今後の研究の推進方策

現在、ベルギー・ゲント大学で開催される「第24回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム(16th EAJS International Conference 2020)」での発表が採択されている。当初、2020年8月の開催予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2021年8月に延期された。この発表に向けた準備を進める予定である。なお現段階では、新型コロナウイルス感染症の収束時期を予測することができないことから、研究計画の見直しを行い、2020年度については、音声データが公開されているコーパスや国内メディアをデータとして、舌打ちや笑いの研究を進める。また中止している現地調査については、新型コロナウイルス感染症収束後に実施する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症拡大により、現地への渡航が禁止され、2020年3月に予定していたタイでの現地調査を実施することができなかった。これにより、経費として計上していた人件費・謝金および旅費充当分が未使用となった。現時点では新型コロナウイルス感染症の収束時期を予測することができないことから、2020年度については、研究計画の一部見直しを行い、研究を遂行する。
・音声データが公開されているコーパスや国内メディアをデータとした研究を進めるための研究費用として使用する。
・データ収集や入力等に必要な経費およびデータ処理や分析に必要な経費として使用する。
・2019年度に計画していた現地調査については、渡航が可能になった時点で実施する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] Chulalongkorn University(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      Chulalongkorn University
  • [雑誌論文] タイ人の舌打ち―マルチモーダルインタラクションにおけるその意味―2020

    • 著者名/発表者名
      萩原孝恵、池谷清美
    • 雑誌名

      山梨県立大学 国際政策学部紀要

      巻: 第15号 ページ: 75-86

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 舌打ちが伝えるメッセージ―映像データの観察を通して―2020

    • 著者名/発表者名
      萩原孝恵
    • 学会等名
      第24回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム(16th EAJS International Conference共催)
    • 国際学会
  • [学会発表] ベトナム人学習者と日本語母語話者 ―日本語フィラーの使用法の比較から―2019

    • 著者名/発表者名
      萩原孝恵、池谷清美
    • 学会等名
      言語文化教育研究 国際研究集会
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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