研究課題/領域番号 |
19K00585
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
北原 真冬 上智大学, 外国語学部, 教授 (00343301)
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研究分担者 |
米山 聖子 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (60365856)
田嶋 圭一 法政大学, 文学部, 教授 (70366821)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レキシコン / L2 / 無声化 / 強勢 / 英語 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,音声の産出におけるレキシコンの特性の影響を検討し,当該分野における先端的な研究者が集まる国際学会NEW SOUNDS2022,また国内では日本音声学会において発表を行なった.国際学会においては日本人英語学習者の英単語発音における母音の長さ,音質,無声化等について検討した実験の結果を発表した.その要点として,日本語における母音の発音において特徴的な無声化が英語発音にも転移し,英単語の無強勢音節を無声母音で発音することが挙げられる.母語の音韻的な特徴がL2のレキシコンにある強勢の位置情報と相互作用を行う点で極めて興味深い.この現象は英語母語話者には当然のことながらほとんど見られない.また,母音長や音質(フォルマント値)においても,英語母語話者と英語学習者では,特に第一強勢,第二強勢,無強勢という三段階の対立の実現に際して際立った違いが現れた.端的に言えば英語学習者は第二強勢をあまり実現できておらず,無強勢と同等に扱うことが多い.これはL2レキシコンの中に第二強勢の位置情報を保持していないか,あるいは強勢位置に関する音韻規則を体得していないことが原因として考えられる.国内学会においては上記と同じトピックについてさらにデータを拡充し,正規化を行うことで統計的手法を洗練させたものを発表した.いずれの学会においても活発なフィードバックと有効な議論を行うことができた.これらの研究の成果は外国語教育等におけるさまざまな応用が期待できるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響をようやく脱しつつあり,防音室における実験を再開してデータを拡充している.ただ,国外からの旅行者の入国はまだ許されていなかった時期があり,英語母語話者のデータについてはオンライン辞書等の音声を利用することとなった.それを補うために次年度に向けて比較対象用に米国で英語母語話者の音声データを多数録音した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度中に得た英語母語話者,国内の英語学習者(上級および中級)の合計3グループを対照させた研究報告を2023年度中に主要な国際学会および国内学会で発表する予定である.8月にはチェコで開催されるICPhSでの発表がすでに採択されている.また9月の日本音声学会(札幌)または日本音響学会(名古屋)における発表を検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度からのCOVID-19の影響により,旅費として見積もっていた予算,および被験者への謝金として予定していた予算等の執行が当初の計画通りに進んでおらず,2度目の延長を行うこととなったため.今年度はすでに国際学会の発表が採択されているものがあり,旅費として執行することを計画している.ただし,為替レートの変動や航空運賃,ホテル代の高騰を考慮する必要がある.
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