研究課題
今年度は日本語の非対格動詞について、事象の限界性が当該動詞の非対格性にどの程度影響するのかを調べることに重点を置いて研究を進めた。研究室の大学院生とともに通常非対格動詞であると思われる動詞を選定し、容認度判断課題を母語話者に対して行った。先行研究から、遊離数量詞を伴うことができるかどうかが非対格性のテストになるということが知られており、その観察をもとに実験をデザインした。それらの動詞句と組み合わせる主語の有生性について、ロマンス系の言語では非対格性に対する影響が観察されていたが、日本語の先行研究ではその効果があまり明確ではなかった。そこで、動詞句を十分に統制した上で主語の有生性を操作する実験を実施した。またその際に動作主性を明らかにするために「わざと」のような意図を表明する副詞を加え、遊離数量詞の有無も要因として加えた刺激文を作成した。日本語母語話者に刺激文の容認度を判定してもらった結果、主語の動作主性が遊離数量詞の容認性に大きく関わっていることがわかった。つまり、動詞が一般的に非対格動詞と呼ばれているものでも、主語の動作主性を高めると遊離数量詞の容認性が低くなることがわかった。これは、非対格動詞がまるで非能格動詞のように振る舞っていることを示す。また同様の実験を英語母語話者である日本語学習者に対して実施した。こちらは使用する語句の統制が難しく、上級の学習者を十分な数揃えることができなかったので、理想的なデータを収集することが難しかった。実施方法については来年度に向けて検討をする必要があると思う。
2: おおむね順調に進展している
今年度については、予定していた実験を実施することができ、また大学院生が論文を作成していることを見ると、十分な進捗が得られていると感じる。一方、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、来年度は実験の実施が極めて難しく、また研究室の活動を大幅に制限する必要があるため、十分な進捗が見込めない。
上で述べたように、新型コロナウイルス感染拡大による影響が大きい。人から得るデータをもとに研究を進めていく計画であるので、リモートで研究を進めるのが難しい。オンライン上で調べることができるデータも存在するが、2年目以降に計画していた事象関連電位計測実験については実施の見込みが立たない。別の形での実験を計画する必要がある。また出勤停止・研究室を使うことができないという環境からの制限も大きい。授業・学内業務にかかるコストが予想していたよりも大きいことにより、研究に割けるエフォートが少なくなっていることを懸念している。
計画は順調に進んでいるが、他機関の予算で支出できる項目が多かったため、次年度使用額が生じた。
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