研究課題/領域番号 |
19K00595
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田口 善久 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (10291303)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミャオ語 / 使役移動 / 感覚表出 |
研究実績の概要 |
本研究は,ミャオ語系諸言語の文法について,言語類型論的情報を収集・整理するとともに,それに基づいてミャオ語系諸語の文法の過去の姿を究明しようとするものである。今年度は、ミャオ語の「置く」という使役移動を表す構文についての類型論的研究を行った。まず、申請者が主として研究している羅泊河ミャオ語について、収集しているテキストに基づいた研究を行った。それによると、羅泊河ミャオ語では、「置く」を表す構文は、?miA(?は声門閉鎖音)という形態素が「置かれる対象」すなわち被使役移動体を導き、その後に形態素qoCが現れ、それが移動先を導くという構文をとる。ここで問題は、?miAにもqoCにも「置く」という意味はないことである。ただし、?miAは他のミャオ語との比較により、「取る」という意味の動詞だったことが推測される。ここで、「取る」義の動詞が使役移動を表す構文を形成しうることが、アフリカ及び中国の言語により明らかにされており、本研究はそれらの先行研究と状況を対照しつつ分析を行った。結論としては、?miAが「処置」を表す構文及び、qoCが使役移動のゴールを表す構文が基盤としてあって、?miAとqoCの構文が成立したこと、先行研究における他言語の使役移動は「授与」を表すのだが、それがミャオ語では「置く」になることは、その使役移動が「所有」の移動なのか物理的移動なのかの差で、基本的には類比的に捉えることができることである。 また、これとは別に、感覚表出詞についても記述研究を行った。感覚表出詞は犠牲擬態ともいわれる感覚を言語で表現するものであるが、ミャオ語の中でも専用の語類と構文が存在する。これについてテキストに基づいてその意義的・構文的特徴について記述した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は新型コロナウィルス万円の影響で中国の研究者・言語情報提供者との会合が中止になり、ウェブ環境がよろしくない言語情報提供者とのやり取り、情報の収集が思うように進展していない。
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今後の研究の推進方策 |
主にテキストに基づいて、文法の類型論的研究を継続する。新たに、名詞化の手法について類型論的に研究する。また、近い将来、中国に赴き、ウェブ環境がよろしくない言語情報提供者とのやり取り、情報の入手について対策を講じたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス流行のため、当初予定していた学術交流・情報収集のための旅費の支出がなくなったためであり、今後状況好転後に同様の事由および追加資料購入のために使用する予定である。
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