研究課題/領域番号 |
19K00600
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
安藤 智子 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (00345547)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロソディ / 岐阜県 / リズム / イントネーション |
研究実績の概要 |
本研究は、岐阜県東濃地方(美濃地方東部)西部方言のイントネーションなどの音声的な特徴を明らかにすることを目指して進められている。この方言のアクセントの体系は共通語と変わらないのに、イントネーションやリズムの点で独自性を持っていることを、自然に近い会話の音声を詳細に分析することにより、明らかにしつつある。 今年度の具体的な成果としては、多治見市の高齢層の会話データから、主に2つの点が明らかになった。 (1) 文や節の初頭の拍が内部の拍に比べて条件により32~40%長くなる独特のリズムが現れる。 (2) アクセントの下降位置が文頭2拍目までにない場合、文頭のイントネーションの上昇が共通語に比べて遅れ、イントネーションが高く平らになる時間が短い傾向がある。 これらの特徴は、共通語や東京方言において疑念などの感情を込めた発話にも見られることが先行研究において明らかにされているが、東濃西部方言では感情的な発話だけでなく通常の冷静な発話においても現れるという点が独特である。こうした研究成果は、関西言語学会において口頭発表を行い、さらに学会誌 KLS Selected Papers 2 に掲載される論文にまとめられた。 また、これまでの調査に伴って整理してきた語彙や文法の特徴を生かして、方言を読み札に用いた「たじみべんかるた」200部を製作した。これを多治見市内の学校、児童館、福祉施設や図書館、調査への協力施設などに配付したところ、個人で所有したいとの市民の声があり、株式会社東文堂本店より出版することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに収集していた音声データの分析は計画どおり進めることができ、それに基づいた学会発表を行い、論文を発表した。また、研究成果の市民への還元として方言カルタを製作し、学校・福祉施設などへの配付も予定どおり実施した。 その一方で、2月からの新型コロナウイルス感染が岐阜県内においても発生したことを受けて、面接調査を控えざるをえなかったことから、対象地域・年代を拡大した調査の計画は実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、(1)当初から予定されている音声データの分析に加え、(2)昨年度のコロナ禍によって断念した若年層への調査を行っていきたい。このうち(2)については、昨年度製作した方言カルタの配付の協力を得た多治見市教育委員会からの依頼により、中学生への講演が予定されており、これを契機として若年層を対象とした調査および教育への還元を行っていく計画である。 しかし、新型コロナ感染の動向によっては(2)の調査が十分に行えないことも予測される。そのような場合には、移動を伴わずに行うことのできる(1)の作業およびその考察を2021年度分まで進めていく考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の見積もりが実際の価格と合わなかったために生じた軽微な誤差により、次年度使用額が発生した。次年度の記憶メディアなどの物品購入に使用する予定である。
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